Thursday, December 22, 2022

重さ30キロのスクラップブック 大竹伸朗氏 タブーなき過剰な世界 ... - 朝日新聞デジタル

 選択と集中、効率化。そんな言葉ばかりが聞こえる時代に異を唱えるような大回顧展を、現代美術家の大竹伸朗(しんろう)さん(67)が開いている。モノとモノがクラッシュしたような表現は、過剰にして過密。一見無軌道にも感じられる。「若い人にはこんなムチャクチャなじじいがいるんだと実感してほしいね」と語るのだ。

 東京国立近代美術館(東京・竹橋)の展示室を埋め尽くすのは、9歳時の作品から新作まで約500点。むせ返るような濃密な空間が広がる。東京都現代美術館での「全景」展以来、16年ぶりの大回顧展だ。

 「最新作はもちろん、全景展の後に作った『モンシェリー』も見せたかった」

 「モンシェリー:スクラップ小屋としての自画像」は2012年に、世界最大級の国際展、ドイツの「ドクメンタ」に招かれて発表した作品だ。「あの頃は、日本国内では当事者でないと東日本大震災には触れられない雰囲気だった。表現者たちも無気力になっていたし。海外だからあの表現ができた」

 小屋の屋根に車輪や小舟が突き刺さり、内部は廃棄物やギターで埋め尽くされているさまは、確かに震災の表現にも見える。一方で大竹さんが長年続けてきた記憶を集積するような方法の一つであり、ある意味、予言的でもあった。

 そして小屋の中にも1冊置かれている巨大なスクラップブックは、大竹さんの代表的な表現の一つ。13年には、ドクメンタと並ぶ最高峰の美術展ベネチア・ビエンナーレでも展示した。

 本というより置物のようなサイズで、雑誌やチラシの切り抜きはもとより、レコード盤や錠剤までが貼り込まれ、絵の具も塗られているものや、約30キログラムに及ぶものも。今回、1977年の1冊目から最新の71冊目までがそろった。

 「収集する人って思われるんですが、収集ではなく全く違うもの同士を貼り合わせることに興味がある。アートなんか意識していないし、アートを意識するということ自体、よく分からない」「コラージュのために、わざわざネットで買い集めるようなこともしません。レストランの箸袋とか、いくらでも集まりますよ」。正統派のシュールレアリストの発言ともいえる。

 大竹さんは80年代、荒々し…

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