Friday, December 23, 2022

大量解雇とIT投資を同時に実施した企業の顛末 テクノロジー重視 ... - ITmedia エンタープライズ

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Transport Dive

 輸送サービスを提供するC.H.Robinson(注1)は、2020年にレイオフ(一時解雇)を実施して以来、市場シェア拡大に向けてIT戦略に力を注いでいる。ところが、アナリストによると、同社が競合他社に差を付けるためには、こうしたシステムや技術に目を向けるだけでは十分とは言えないという。

 人件費を削減した分をIT投資に振り向けるだけでは十分ではない。その理由とは。

IT投資強化の「冴えない結果」 その理由とは?

 最高製品責任者からCOO(最高執行責任者)に昇格したアルン・ラジャン氏は、第3四半期決算説明会で「輸送会社と顧客の双方に当社が提供するデジタルサービスを浸透させるため、輸送管理システム『Navisphere』を活用したプラットフォームの強化に取り組んでいる」と報告した(注2)。2022年のNavisphereを通じた航空会社の積荷予約は、前年同期比で77%も増加した。

 「Transport Dive」は、投資銀行KeyBanc Capital Marketsのトッド・ファウラー氏と、金融持株会社Stifel Financialのブルース・チャン氏に連絡し、最近のC.H. RobinsonのレイオフとIT投資の増加に関する見解を聞いた。

(原注)以下のやり取りは分かりやすいように簡潔に記述している。

コロナ禍からの回復後に需要低迷の「打撃」

――C.H. Robsinsonは、人員を拡大した直後にレイオフを発表した(注3)。これは戦略上どのような意図があったのか?

ブルース・チャン氏(以下、チャン氏) 貨物輸送部門の人員配置を需要予測に合わせることができなかったのは、組織的な計画が不十分だったことが原因だろう。シェア拡大や市場の回復によって短期的に事業活動を成長させる意図があったとすると話は別だが、そうでないことは決算説明会のコメントからも明らかだ。

 C.H.Robinsonは資産を持たず、サービスを中心に展開している。同社の特徴の一つは、変動費の変化に柔軟に対応し、市場が回復しても人件費をコントロールできるという点だ。これは同業のExpeditors Internationalが過去頻繁に行ってきたことでもある。ただし、市場の変化に迅速に対応できない場合は、今後もあらゆる局面で利益が圧迫されるだろう。

トッド・ファウラー氏(以下、ファウラー氏) 後知恵であれこれ言うことは簡単だが、過去数年の状況からある程度の見通しがつくかもしれない。2020年に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックが発生した際、C.H.Robinsonは従業員をレイオフした。2021〜2022年にはこの混乱を落ち着かせるため、解雇した従業員を復帰させようとしたが、労働市場の逼迫(ひっぱく)によって十分な人員を確保できなかった。

 しかし、2022年第3四半期に起きた需要の低迷が、特に国際輸送(グローバル・フォワーディング)(注4)において想定よりも深刻、かつ急激だったため、同社の従業員数は一時的に超過した。ここ数年不安定な市場環境が続いたことに加えて、パンデミックを起因とした頻繁な人員調整が業績不振に拍車をかけたといえるだろう。

――C.H.RobsinsonはIT投資に注力している。これはコスト削減という観点で考えると正しい判断なのか?

チャン氏 IT投資はビジネス戦略において重要な手段の一つだが、全てが有効というわけではない。効果的で投資利益率が良いものもあれば、当然そうでないものもある。そして、成功を得るには、技術を使いこなすために研修プログラムを整備したり、経営層が従業員に技術の活用を促したりする必要がある。

 新COO(最高執行責任者)のラジャン氏が、IT投資の必要性を深刻に受け止めていることは評価できるだろう。しかし過去5年間、2度の景気変動の中で同社はIT投資を戦略の主軸としていたにもかかわらず、未だに業績や収益性は改善していない。

 特に国際貨物輸送は、パンデミック後の空前の需要増加を背景に各社が業績を大きく伸ばした。その後のサプライチェーン正常化に伴って、今後は景気動向に左右されずに自力で事業を拡大することが求められる。

 Navisphereは北米の陸上輸送ですでに効果を発揮したが、国際輸送においても同様の効果が期待できるかどうかは疑問だ。C.H.Robinsonの貨物輸送部門が業界トップの企業との差を詰めるためには、著しい努力と投資が必要になるかもしれない。

ファウラー氏 私もそれがC.H.Robinsonのここ数年の経緯だと考えている。ブローカー業界の競争は常に激しいが、C.H.Robinsonにはマイナス面だけでなくプラス面もあると考えている。

 業績が振るわない中でもC.H.Robinsonの事業規模とスケール、そして膨大な過去の価格設定と顧客データはブローカーにとって有利となる。C.H.Robinsonが今後もNavisphereのようなIT分野を強化していく上で、こうした基盤は非常に有利な材料になり得るだろう。

 このように新たなテクノロジーを導入し始めた企業は、ブローカーからこれまでとは異なる基準で評価されるケースもある。C.H.Robinsonがデジタルサービスの領域で勝ち残るためには、既存のシステムに投資し続けなければならない。規模が大きくなるにつれ、文化的、構造的な課題を乗り越えていく必要もある。

 C.H.Robinsonは小規模な競合他社と比較して多くの優位性を持っているが、今後は機動力や市場への対応力をより一層高めていくことが求められる。こうした状況を加味すると、ラジャン氏は同社を立て直すのに適任といえるだろう。

(注1)米国の大手サードパーティロジスティクスプロバイダー。サードパーティロジスティクスプロバイダーとは、荷主から物流業務全般を一括で請け負う事業者のこと。倉庫管理から梱包、出荷、輸送、配達までを手掛ける。

(注2)C.H. Robinson Worldwide, Inc. (CHRW) Q3 2022 Earnings Call Transcript(Seeking Alpha)
(注3)CH Robinson confirms layoffs as costs rise(Transport Dive)

(注4)フォワーディングとは、自社では輸送手段を持たず、他社の航空機や鉄道、トラックなどを組み合わせて貨物を輸送すること。

(初出)Analysts break down CH Robinson layoffs, tech investments

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