「見える資産」が主流だった時代が終わり、今は「見えない資産」が台頭しています。その代表格が「データ」です。データという富の特性を知ると、GAFAに代表されるプラットフォーマーの「市場支配」の仕組みとその危うさが見えてきます。長年情報通信政策に携わり、現在は大手プロバイダーのIIJ副社長である谷脇康彦氏の著書『教養としてのインターネット論 世界の最先端を知る「10の論点」』から一部を抜粋して紹介します。
従来の資本主義においては有形資産(tangible asset)を投入物(原材料)として新たな価値が生み出されてきました。例えば、企業は大規模な資金を投入して原材料や製造機械を購入し、大量の労働力を投入してモノを生産してきました。統一規格の商品の大量生産・大量消費によって経済成長を実現してきました。
しかしデジタル時代となり、有形資産に代わり無形資産(intangible asset)の重要性が飛躍的に高まってきています。なかでも目に見えない無形資産の中核をなすのが「データ」です。
有形資産の場合、需要が増加すると設備投資によって生産力の増強を図る必要があります。さもないと超過需要が生まれ、製品価格が上昇します。ところが、無形資産の場合、新たに資産を生み出すための追加費用は限りなくゼロとなります。なぜならデータを生み出すために製造機械に新たな投資を行う必要はなく、また財を生産しても原材料であるデータが目減りしない非競合性という特徴があるからです。
無料サービスを使うための高すぎる代償
有形資産が主流の工業化社会において、大量生産・大量雇用を前提とした生産拡大局面では労働力不足・賃金上昇が生まれ、労働分配率を上昇させてきました。しかし、無形資産の場合はデータが一部の企業に集積される富の集中が起こったとしても労働市場には特段の影響はなく労働分配率は上昇しません。
それでは、なぜ富の集中が起こるのか。
それは限界費用ゼロというデータの無形資産としての特徴により、データ活用型のビジネスは規模が幾何級数的に拡大する強烈なスケーラビリティが働くからです。
しかも、個人がプラットフォーマーに対して個人情報を提供する代わりに無料のサービス提供がなされていますが、個人情報の価値とサービスの価値が等価である保証はありません。むしろ個人情報の価値が提供されるサービスの価値(利用者にとってゼロ円が事実上の下限値)を上回っている場合、プラットフォーマー側が必要以上に便益を享受していることになります。
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