事件翌日、安倍首相が銃撃を受けた奈良県の大和西大寺駅にはたくさんの人が献花に訪れていた(写真:Kosuke Okahara/Bloomberg)
7月8日午前11時30分前後、奈良県で選挙遊説中の安倍晋三元首相が銃撃され、17時3分ごろ死亡が確認された。筆者が気になったのは報道を見る限り、首相に同行していたSP(セキュリティ・ポリス)が1人だったことだった。
SPとは1975年に三木武夫首相(当時)襲撃事件を契機として警視庁内に設置された要人警護部門である。国会に議席を有する各政党の代表者や各国から来日する要人等の身辺警護を任務とする。
警視庁以外の警察本部にも警護担当部署は存在しており、例えば大阪府警と京都府警では警衛警護課が、神奈川県警などでは公安第二課が警護を担当する。その他の小規模な県警察本部では「警備部警備課警衛警護係」として少人数の専従員が編制されているのみである。例えば首相が地方に行く場合、近接警護をSPが行い、それ以外の後方支援を地元県警の警護担当部署が行う。
元首相の場合、同行するSPは1人程度
戦後の日本では国家警察が存在しない。そのため最大の警察組織である警視庁が準国家警察のような役割を果たし、各県警を支援するような形式になっている。しかし、今回の件を受けてこのシステムで十分なのか、さらには、県警が十分な協力ができるのか、という疑問が出る。
警視庁はSPの人員を公表していないようだが、ネット上で出てくる情報では数百人程度とも言われている。そのためか元首相の地方遊説等に関するSPの同行は今回と同様に1人程度で、そのほかに現地の県警から40人前後の警察官が参加するなどが一般的らしい。
8日夜に開かれた奈良県警の会見では、警護体制の詳細を明らかにしなかったが、地方の県警は予算などの制約が多く、訓練なども十分ではない可能性がある。このように国家警察のない日本のシステムには問題が多い。
一方、アメリカのシークレットサービスは6000人以上の人員を抱えている。そして全国組織である。
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