
高齢者に多い「寝つくのに時間がかかる」という悩みを、音楽が解決してくれるかもしれない。その可能性を示す研究結果が報告された。論文の上席著者である国立チェンクン大学(台湾)のYen-Chin Chen氏は、「音楽療法が不眠症の高齢者に効果的であることが分かった」と述べている。研究の詳細は、「Journal of the American Geriatrics Society」に4月20日掲載された。
Chen氏は、「この研究で明らかになったポイントは3つ存在する」と語る。ポイントの第一は、高齢者に音楽療法が有効であるという前述の点で、第二は、落ち着いた音楽はリズミカルな音楽よりも効果的であるということ、第三は、音楽を聞く習慣を4週間以上続けると有効性が高まるという点だという。このような対策により十分な睡眠を取れるようになれば、「思考や記憶機能、そして活力の改善が期待できる」と同氏は述べている。
Chen氏らは、高齢者の睡眠の質に及ぼす音楽の影響を調べた研究のシステマティックレビューとメタ解析を実施。Embase、Cochrane Library、Scopusなどの文献データベースに2021年2月20日までに公開された、60歳以上の高齢者に対する音楽療法の有効性を評価した研究を検索した。適格条件は、ランダム化比較試験であり、英語または中国語で執筆された論文とした。
2人の独立した研究者がレビューした結果、5件のランダム化比較試験の報告が抽出された。研究参加者は合計288人で、約半数が就寝時に音楽を聞く群に割り当てられ、残り半数は不眠症に対する他の治療を受けるか、まったく治療を受けない群に割り当てられていた。リズミカルな音楽と落ち着いた音楽とで効果を比較した研究も含まれていた。
メタ解析の結果、音楽を聞く群の方が音楽を聞かない群よりも、睡眠の質が有意に高いことが明らかになった〔ピッツバーグ睡眠質問票のスコアの平均差(MD)-1.96(95%信頼区間-2.23~-1.73)、P=0.003〕。サブグループ解析では、落ち着いた音楽の方がリズミカルな音楽よりも、睡眠の質をより効果的に改善することが分かった〔MD-2.35(同-3.59~-1.10)、P=0.0002〕。また、音楽を聞きながら眠ることを4週間以上続けた場合にも、改善効果がより高まることも確認された〔MD-2.61(同-4.72~-0.50)、P=0.02〕。
米国立老化研究所は、高齢者には毎晩7~9時間の睡眠が必要としている。しかし、高齢者の約40%が不眠症を経験するとの報告もある。不眠症を含む睡眠障害は、神経過敏症状やうつ病の一因であり、記憶障害を引き起こしたり、転倒や事故につながる可能性もある。
Chen氏らの論文をレビューした米アラバマ大学バーミングハム校のAlayne Markland氏は、「この研究内容は斬新だが、思考力や記憶力が低下している高齢者では、解決すべきより多くの問題を抱えている」と指摘する。Chen氏らの研究解析対象からは、アルツハイマー病、パーキンソン病、その他の神経系疾患患者が除外されており、それらの疾患の影響で寝つきが悪くなっている高齢者での音楽の有効性は示されていない。またMarkland氏は、「不眠症に対しては認知行動療法など他の治療法もあり、それらが適している人もいる。今回の研究結果だけでは、どの治療法が最適なのかを述べることはできない」と語っている。
一方、米スタンフォード大学睡眠医学センターのRafael Pelayo氏は、「高齢者が眠れなくなるのには複数の原因が考えられるが、正しく対処すればほとんどの場合、睡眠の改善を得られる」と語る。Pelayo氏によると、睡眠の問題がストレスに関連している人では、睡眠の補助として音楽を聞くことの効果がより大きい可能性があるという。「誰もが安全、快適な環境で眠りにつくべきだ。音楽を聞くことは、ストレスフルな人のメンタル状態を落ち着かせるのに役立つ」と同氏は解説している。(HealthDay News 2021年4月26日)
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からの記事と詳細 ( 音楽が高齢者を良質の睡眠に誘う - HealthDay )
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