Monday, March 15, 2021

市街地の移動に最適な小型EV プジョー「e-208」(Vol.614) - 読売新聞

 フランスのプジョーが小型ハッチバック車「208」をモデルチェンジし、電気自動車(EV)モデルが加わった。他社の競合車は、同じフランスのルノー「ルーテシア」や、ドイツのメルセデス・ベンツ「Aクラス」、トヨタ自動車「ヤリス」などだが、EVモデルがあるのは「208」だけだ。

 今回試乗したのは、2グレードあるうちの上級の「GTライン」だ。標準の「アリュール」との違いは、タイヤ仕様などが異なることや注文装備となるパノラミックサンルーフの設定の有無くらいである。

 ガソリンエンジン車と同じ車体を使っているが、外観にEVを示す装飾が施されている。フロントグリルに車体と同じ色が加わり、シンボルマークであるライオンのエンブレムも見る角度により同色に変化する加工がされてある。

 電気駆動機構は、SUV(スポーツ用多目的車)のEV「e-2008」と共通だ。「e-208」は小型軽量である分、一充電走行距離は18キロ長く403キロ(JC08モード)となっている。

 EVらしく、発進では軽くアクセルペダルを踏み込むだけで力強く動き出し、その後の加速は静かで滑らかだ。住宅地の路地などを徐行しながら角を曲がる際も、アクセルペダルの操作に忠実にクルマが動くので、運転しやすいと感じるのではないか。車体も小柄だから、市街地での移動に最適だ。

 走行モードを選ぶこともできる。発進時の設定はノーマルで、ほかにエコとスポーツがある。エコを選べば、電力消費を抑える制御を行い、走行距離を伸ばすことができる。エコでも日常の運転で力不足を覚えることはなさそうだ。試乗中にスポーツやノーマルと切り替えながら運転したが、エコのまま走り続けても不満はなかった。高速道路を走っても、その思いは変わらなかった。

 スポーツにすると、より少ないアクセル操作で加速の勢いを増す。だが、そもそもEVは十分な加速を得られるので、あまり必要性は感じなかった。EVを運転していると心が穏やかになると感じることが多く、必要以上の加速への意欲が失われるのかもしれない。

 アクセルのワンペダル操作は採り入れていないが、より強い回生が得られるBレンジを活用すると速度調整をしやすくなる。停車時にブレーキペダルを踏む必要はあるが、Bにしておくとアクセルペダルの調節だけで交通の流れに速度を合わせていくことができ、運転が楽だった。

 前席はもちろん、後席も快適だった。床下にリチウムイオンバッテリーを搭載するが、後席の足元に影響もなく着座できる余裕があり、安定した姿勢を保てた。荷室の容量も、小型ハッチバック車としては十分だと感じた。

 残念なのは、SUV「e-2008」に設定されていたシートヒーターがないことに加え、国産EVでは設定が増えている「V2H」(ビークル・トゥー・ホーム=車から家へ)という機能がないことだ。

 太陽光パネルを設置している家庭であれば、その再生可能エネルギーで車に充電することもできるし、停電時などには、車から家に電力を供給することで日常生活を数日間維持できる利点もある。

 輸入車のEVでは最も安いといわれる価格を含め、大いなる満足をもたらす「e-208」だが、「V2H」の視点が欠けているのは残念でならない。ヨーロッパのメーカーもEVのクルマ以外の価値にも気づいてほしいと思う。

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