1日から、正規雇用と非正規雇用の労働者間にある不合理な待遇差を解消するための「同一労働同一賃金」に関する規定が、熊本県内事業所の大半を占める中小企業にも適用される。県内では、待遇差の解消に取り組む事業所がある一方で、新型コロナウイルスの影響もあり、準備不足のまま4月を迎えた事業所もあるとみられる。
菊池市の高木歯科クリニックは2020年から、正規労働者2人とパート従業員5人の退職金を同じ就業規則に基づいて算定するため、社会保険労務士を交えて従業員への説明を進めている。
高木公康院長(58)は従業員たちの理解を得た上で就業規則を見直す考えだ。「コロナ禍の経営は苦しいが、これを機に従業員の頑張りに応えたい。待遇改善が今後の人材確保につながれば、との期待もある」という。
パート従業員の歯科衛生士、安武ルミさん(53)は「給与や賞与などの待遇の差の根拠について説明を受けているので、納得して働ける」と話す。
一方、県内の医療や介護の分野で働く人たちでつくる労働組合の男性幹部は「正規と非正規の間で、手当や休暇の格差が残っている事業所はまだ多い」と指摘。「業務への責任や役割に対する認識に労使間の隔たりがあることが原因の一つだ」と分析する。さらにここ1年は、コロナ禍の影響で労使協議がオンラインや項目を絞った交渉になり、十分な時間を確保できなかったケースもあった。
同一労働同一賃金などの推進を担うため、厚生労働省が開設した熊本働き方改革推進支援センター(熊本市中央区)の村本良一センター長も「感染拡大後は、出張相談やセミナーを十分に開催することができず、中小企業の具体的支援が進まなかった」と話す。
熊本労働局の昨年11、12月の調査によると、県内に本社機能がある非正規労働者がいる546社のうち、2割に当たる109社が通勤手当で待遇が違うと回答。このうち37社が待遇の違いを「説明できない」とした。
熊本労働局雇用環境・均等室によると、今年に入ってからも、中小企業から「具体的な社内規則の見直し方法が分からない」などの問い合わせが相次いでいた。1日以降も相談を受け付ける。TEL096(352)3865。(隅川俊彦)
◇同一労働同一賃金 正社員と非正規の不合理な待遇差を認めない考え方。2018年に成立した働き方改革関連法の柱の一つ「パートタイム・有期雇用労働法」は、仕事の内容や責任が同じ場合に基本給・賞与、手当などの待遇を等しくする「均等待遇」、仕事や責任が違っても不合理な格差を禁止する「均衡待遇」を規定する。従業員が求めれば、待遇の違いや理由を説明する義務を負う。理由の説明を求める労働者への不利益な扱いも禁止した。罰則はない。大企業では20年4月から適用されている。
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