
新型コロナウイルスの感染者が爆発的に増えた流行「第5波」では、首都圏などで病床が逼迫(ひっぱく)し、適切な治療を受けられずに自宅で容体が悪化する患者が相次いだ。 昨年1月以来の国内の感染者数は約170万人に上り、亡くなった人は1万8千人を超えた。この間の政府の対応は後手に回ったとの批判を招いた。 岸田文雄首相は「最悪の事態を想定して次の感染拡大に備える」と今後の医療体制の整備に意欲を示したが、立憲民主党は病床逼迫(ひっぱく)などを「自公政権による失政」「地域医療構想でベッド数を減らした結果だ」などとして与党との対決姿勢を強めている。 冬場にも想定される感染「第6波」への備えが急務だ。 政府は今月、今後の感染拡大を見据えた対策の骨格を示した。ウイルスの感染力が2倍になっても対応できるよう、入院患者の受け入れを2割増やす。病床使用率についても、実際には使用されない「幽霊病床」を減らすなどして、最低8割を確保するとした。 ただ、いくら病床を増やしても必要な人材を確保できなければ十分な医療は提供できない。 今夏の「第5波」では、医療機関で医師や看護師の確保が追い付かず、離職も相次いだ。スタッフの待遇改善や養成など、根本的な課題を解決する施策も求められる。 各党は公約で、政府の機能強化を図るべきだと主張する。 自民は「行政がより強い権限を持つための法改正を行う」、立民は「国が、病床等の確保に主体的・積極的に関与し、責任を持つ」などと訴える。医療を機能させる政治の役割は、十分果たさなければならない。 一方、きめ細かなコロナ対策とするには、地域への目配りも欠かせない。 感染急拡大に伴い、相談対応の窓口となる各地の保健所は、感染者の健康観察や入院調整などの業務に追われてパンク状態となった。 専門家は、保健所の限られた職員で入院調整から自宅療養者のフォローまで全ての対応を担うのは無理がある、と指摘している。 与野党も、施策の調整に当たる司令塔組織の必要性に言及しているが、国や自治体と保健所、医療機関の連携の在り方などについて具体的な議論を深めてほしい。 ワクチン接種の進展に伴い、経済活動の再開に軸足を移す動きが各地で見られる。 首都圏や関西で飲食店に要請されていた営業時間短縮や酒類提供の制限は、順次解除されている。接種済み証や検査の陰性証明を活用する「ワクチン・検査パッケージ」の実証実験も始まった。 行動制限の緩和は、3回目の接種も含めたワクチンの着実な普及、PCR検査体制の充実が前提となる。飲み薬の実用化をはじめ、病床不足を補う臨時医療施設や酸素ステーションの整備なども急ぐべきだ。 各党は、国民が安心できる政策と実現への見通しを分かりやすく示してもらいたい。
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