あのMiniが帰ってきた
10月にDJIの小型ジンバルカメラ「DJI Pocket 2」をレビューしたところだが、今年後半のDJI製品は、シリーズ名であったOsmoをやめて「DJI」を製品名の中に入れ込んでいる。
ドローンでは昨年、200gを切った小型機として「Mavic Mini」があったが、今回このシリーズ名も「Mavic」をやめて、シンプルに「DJI Mini 2」となった。11月12日発売で、標準パッケージが59,400円(税込)、予備バッテリーや専用キャリーケースが付属するコンボセットが79,200円(税込)となっている。
さてこの200gを切るというレギュレーションは、日本独自のものだ。DIDと呼ばれる国土地理院が指定する人口集中地区でドローンを飛ばす際には、航空法上の許可が必要となる。ただこれは、「本体+バッテリーの重量が200g未満のものを除く」という但し書きがついており、200g以下の機体であれば許可が不要になる。
実際、業務でドローン撮影などをしている事業者などで、未だ許可を申請していないというところはすでにないと思う。一方で全くのアマチュアが趣味で空撮する際にいちいち許認可申請を行うというのは現実的ではないので、200g以下の機体を使う必要がある。前作Mavic MiniはちゃんとGPS測位できる本格機体ながら200gを切ったのが画期的だったわけだ。今回のDJI Mini2も同じく200gを切る機体ながら、4K撮影にも対応した。
たった1年での新モデル投入となった本機の実力を、早速テストしてみよう。
ボディとしてはほぼ同じだが……
製品としては、ボディ他必要最小限の付属品で構成される「DJI Mini 2」と、キャリングバッグなどが付属する「DJI Mini 2 Fly Moreコンボ」の2タイプがある。今回はFly Moreコンボをお借りしている。
ではまずボディから見ていこう。機体の構造やデザインとしては、前作のMavic Miniとほぼ同じだ。見た目で違う点は、前方にもLEDが付いたところぐらいだろうか。もちろん、アーム部のロゴは「MINI 2」に変わっている。
一番の変更点は、撮影スペックである。前作のカメラは、有効画素数12メガピクセルの1/2.3インチCMOS、35mm換算24mm F2.8だったが、実は今回のカメラもスペック的には変わっていない。ただし動画撮影解像度が、前作は最大で2,720×1,530/30pの2.7Kだったのに対し、今回は3,840×2,160/30pの4K対応となっている。
また動画撮影の最大ビットレートも前モデルでは40Mbpsだったのに対し、100Mbpsにアップしている。前モデルを買った人はナンダヨーという話かと思うが、恐らく画像処理も兼ねる内部プロセッサの性能が違うのではないかと推測する。価格が1万円以上アップしているのも、そのせいだろう。
またデジタルズームも搭載し、4Kでは2倍、2.7Kでは3倍、HDでは4倍ズームが使える。
バッテリーは、前回は日本向けに200g以下用の低容量バッテリーが提供されていたが、今回も同じである。ただ容量が少し少なくなり、重量も少し軽くなっている。おそらく本体重量との兼ね合いで多少調整する必要があったのだろう。
スペックシートではフライト時間はどちらも18分という表記があるが、これは飛行速度が異なっている。
- Mavic Mini 18分(無風で12km/hの速度で飛行時に測定)
- DJI Mini 2 18分(無風で4.6m/sの速度で飛行時に測定)
単純に飛行速度だけでバッテリー持続時間の比率を測る事はできないが、飛行時間はかなり減ると考えた方がいいだろう。
コントローラは前モデルと全く別物になった。前作はスマートフォンを下側に挟み、上部にアンテナを要するタイプだったが、今回は今年5月に登場した「Mavic Air 2」と同形のものが付属する。アンテナを立てる必要がなく、スマホを挟んだらすぐに使えるタイプだ。コントロール用アプリはMavic Miniと同じ「DJI Fly」が対応する。
バッテリーチャージャは前作と同じ3スロット対応のものだが、カラーがコントローラに合わせたグレーに変更された。バッテリー自体は黒のままである。
キャリングケースも、すべてを平たく収納する箱型から、立体的に収納するカメラバッグ型となった。堅牢さでは前作のほうが上だが、コンパクトに持ち歩けるという点ではカメラバッグ型のほうが有利である。
また輸送時の保護として、プロペラを押さえ込む格好で固定できるプロペラホルダーが付属する。
パリッとした絵柄が撮れる
では早速撮影である。本機は200g以下の小型軽量機であるが、コントローラとソフトウェアがMavic Air 2と同じなので、操作感もほぼ同じである。ただし対物センサーがないので、自動で障害物を避ける機能がない点はMavic Mini同様である。
動作モードは、NORMAL、CINE、SPORTの3つがある。動画の録画中でもコントローラのスライドスイッチで切り替えられるのは便利だ。例えばCINEモードでゆっくり撮影したあと、SPORTモードに切り替えて素早く元の位置に戻し、再びCINEモードでテイク2を撮影、といった使い方ができる。
各モードのスピードをテストしてみた。カメラの仰角が違うので映像のスピード感が多少違うが、距離100m、高度30mに到達する時間を比較したところ、SPORTで18秒、NORMALで22秒、CINEで28秒であった。
本機最大のポイントは、この軽さと価格で4Kが撮影できるところだ。空撮は相当広範囲が撮影できるので、やはり解像度が高い映像が求められる。ビットレートも100Mbpsにアップしたことで、画質的にもかなり満足できるものが撮影できる。HDR撮影機能はないが、コントラストも良好で、見栄えのする空撮が撮れる。
デジタルズームが使えるようになった点も新しい。4Kで2倍、2.7Kで3倍、HDで4倍が使えるが、さすがに4倍となると画質的には厳しいものがある。またズーム動作も、スマホ画面タッチで2倍、4倍と拡大できるが、等倍から4倍へのズーム動作などは画面上の狭い範囲を指でスライドしなければならず、かなりぎこちないものになる。できれば自動ズーム機能も欲しいところだ。
一番気になるのはバッテリーの持続時間だろう。飛行開始から自動帰還モードに入るまでバッテリー3本分をフライトしてみた平均としては、実質的な撮影時間はバッテリー1本につきおよそ8分といったところだ。ただし飛行モードや飛行速度、当日の風速等いろいろな条件によって変わってくるので、無風でホバリングがほとんどという場合はもっと撮影時間は伸びることになる。
Fly Moreコンボのバッテリーは3本あるので、約24分の撮影が可能だ。1本目を使いきったあと、すぐモバイルバッテリーで充電をはじめれば、3本目を使いきったところで93%ぐらいは充電できている。バッテリー交換しながら連続使用するなら、合計30分ぐらいは撮影できる計算である。ただ1本のフライト時間が短いと、良いタイミングなのであともうちょっと撮りたいのにバッテリー切れということが頻繁に起こる。
自動撮影機能であるクイックショットは、Mavic Miniでは4モードだったが、本機では「ブーメラン」が追加され、合計5モードとなった。上位モデルに搭載されている「アステロイド」は相変わらず非搭載だ。
今回コントローラが変わったメリットとしては、最新の映像伝送技術「Ocusync 2.0」に対応したこと。最大伝送距離6kmというスペックである。実際この搭載バッテリーで6kmまで行って戻ってこられるのかという不安もあり、さすがにその距離ではテストしていないが、少なくとも1kmまで離しても映像伝送はまったく途切れることはなかった。アマチュアの撮影用途としては十分だろう。
パノラマ撮影機能もこれまで通り搭載しており、スフィア、180度、広角の3モードを備える。カメラジンバルと機体を自動的に動かして複数範囲を撮影し、自動的にステッチしてくれる。ステッチ後の画像は本体内のSDカードに記録されるほか、コントロール用スマートフォンにも自動転送される。
総論
本機のポイントはなんといっても、ドローンの4K撮影の敷居を大幅に下げたことである。これまでは中型機程度のドローンでなければ撮影できなかった4K動画を気軽に撮影できるようになったのは大きい。アマチュアはもちろんのこと、プロでもロケハンやテストフライトで活用できるだけでなく、短い空撮ならこれだけでOKというケースもあるだろう。
キャリングケースも工夫され、電車移動でも気軽に持って行けるサイズになった。日帰りで海や山に出かけてちょっと撮影、という用途にも向くだろう。
ドローンに興味はあるが決定版的な機体が出るまでは……と思っている方も多いと思うが、本機は入門用としても十分満足できるスペックだ。筆者が入門したときはGPSも自動姿勢制御もないオモチャでずいぶん苦労したことを思えば、ゼイタクな入門機である。
もちろん昔と今では社会のルールが完全に変わってしまっている。いくらホビーとはいえ、しっかりとルールを把握した上で、存分に空撮の醍醐味を味わっていただきたい。
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