ハリケーンが来ないことで知られる地中海に、今、目を持つ雲の渦巻きが発生しています。18日(金)ギリシャのイオニア諸島に「メディケーン」と呼ばれる嵐が上陸しました。
メディケーン上陸
18日(金)、ギリシャ・イオニア島のアルゴストリに、ハリケーンのような見た目の強い嵐が上陸しました。「メディケーン」と呼ばれる嵐です。ギリシャの気象庁はこれを「イアノス(Ianos)」と命名しています。
ギリシャでは最大瞬間風速31m/sの風を記録、海岸には波が打ち寄せ、洪水が発生しています。また中部のラミアでは24時間で142ミリが降りました。この場所の9月の月間降水量は17ミリですから、その8倍の雨が短時間で降ってしまった計算になります。
CNNによると、停電や倒木のほか、ボートが沈没するなど被害が広がっているもようです。
嵐の予想
悪天は週末にかけて続く見込みです。シビアウェザーEUによると、予想される最大瞬間風速は56m/s、雨量は500ミリ以上にも上るほか、落雷や5センチ大の雹、強い竜巻などが発生する恐れもあるようです。
またイアノスの中心気圧は980hPaまで下がる見込みで、観測史上最強のメディケーンとなる可能性も出ています。
メディケーンの正体
このように、メディケーンのもたらす現象はハリケーン並みですが、発生源である地中海は比較的低温です。つまり熱帯生まれのハリケーンと異なり、エネルギー源である十分な水蒸気を海上で得ることは困難です。
とはいえ、メディケーンの見た目はハリケーンそっくりで、温帯低気圧と異なって前線も伴っていません。では一体、メディケーンとは何ものなのでしょう。
メディケーンとは、地中海を表す「メディテラニアン(Mediterranean)」と「ハリケーン(Hurricane)」の造語です。そのメカニズムは分からないことが多いようですが、中心に暖気核、上空に寒気を伴う、熱帯低気圧と温帯低気圧の双方の要素を持っていることが多いようです。
多くは、ハリケーンや台風よりも小さく、弱く、短命なのですが、ときにはカテゴリー1クラス(最大風速34m/s~43m/s)ほどのハリケーン並みのものも発生することがあります。メディケーンは年に1~2個発生し、その被害をもっとも受けやすいのがギリシャです。
稀に中東にも上陸し被害をもたらすことがあります。2019年にはスコットと名付けられたメディケーンがエジプトに上陸し、イスラエルやガザ地区などでも記録的な大雨が降ったり停電が起きました。
本物のハリケーンはヨーロッパに現れるか
このように、メディケーンはハリケーンと性質を異にしますが、いつか本物のハリケーンがヨーロッパに上陸する日は来るのでしょうか。
これまでハリケーンがヨーロッパに到達した例は、たった一つしかありません。それはハリケーン「デビ―」で、1961年にアイルランドを直撃しています。これは極めて稀有な例です。
しかし専門家は、温暖化に伴う海水温の上昇と風の変化によって、ヨーロッパに近い海域でハリケーンが発生しやすくなり、そのまま上陸する可能性があると考えているようです。
ヨーロッパには、古き良き伝統的な建築物が多く残っていますが、今後は強い嵐に耐えうるための補強も必要になっていくということでしょうか。
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September 19, 2020 at 08:02AM
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