Wednesday, September 23, 2020

社説 東京五輪招致 疑惑の闇いっそう深く - 信濃毎日新聞

 東京五輪の招致をめぐる疑惑の闇は深まるばかりだ。大会開催の正当性が問われ、五輪への信頼をも根幹から揺るがしかねない。日本オリンピック委員会(JOC)は自ら真相を明らかにし、明確な説明をすべきだ。

 国際オリンピック委員会(IOC)の委員だったディアク氏側に、シンガポールのコンサルタント会社を経由して招致委員会から多額の資金が渡った贈収賄疑惑である。不透明な資金の流れの一端がここへ来て見えてきた。

 一つは、招致委が計2億円余を振り込んだコンサル会社の口座から、およそ3700万円がディアク氏の息子やその会社に送金されていたことだ。ほかに、息子が購入した宝飾品や自動車の代金もこの口座から支払われ、財布代わりになっていた実態が浮かぶ。

 送金は、東京での開催が決まった2013年のIOC総会の前後に集中している。招致委の資金が票集めの賄賂として使われた裏づけになる可能性がある。

 さらに、招致委が海外に送金した総額が11億円を超すことも今回新たに明らかになった。シンガポールのコンサル会社を除いて送金先や内訳は分かっていない。招致委の関係者は、守秘義務を理由に説明を避けている。

 招致疑惑は16年に明るみに出た。招致委の理事長でJOCの会長だった竹田恒和氏が贈賄容疑で、フランスの司法当局による捜査の対象になっている。

 竹田氏は自身の関与を否定し、潔白を主張しているが、一方的な言い逃れに終始し、疑惑が晴れたとは言いがたい。JOCの会長を退いたからといって責任を免れるわけではない。

 JOCが設けた調査チームは、コンサル会社との契約に違法性はないと結論づけたものの、おざなりで説得力に乏しい。会社の実体さえ定かでないままだ。見え隠れする広告代理店の電通との関係を含め、再度調査を尽くさなければ信頼回復はおぼつかない。

 五輪招致をめぐっては、1998年にソルトレーク五輪の招致委によるIOC委員の買収が発覚。長野五輪の招致でも過剰な接待が明らかになり、IOCは再発防止策として、立候補都市への委員の訪問を全面禁止した。

 それは一方で、不透明な資金の流れを生み、コンサル契約を隠れみのにするのは常識と言われる事態を招くまでになった。五輪の存在意義にも関わる。不正の土壌をなくすため、IOCが自ら果たすべき責任も重い。

(9月24日)

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