米連邦準備制度理事会(FRB)は、長期にわたり極めて低い金利を維持すると表明したことで、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)が終息すれば、ジレンマに直面しそうだ。つまり、資産バブルのリスクにどう対処していくかという難題だ。
こうした懸念は、米ダラス地区連銀のロバート・カプラン総裁が9月の連邦公開市場委員会(FOMC)で、低金利維持のフォワードガイダンスを巡り反対票を投じたことで表面化した。FRBは会合後に公表した政策声明で、インフレが2%に到達し、当面はこれを上回る水準で推移するとみられるまで(大半の当局者は向こう3年は起こらないと予想)、事実上のゼロ金利政策を維持すると表明した。
カプラン氏はインタビューで「長期にわたりゼロ金利を維持することには代償を伴う」と述べる。FRBが低金利を確約することで「預金しても利息は得られないとの見方から、過剰なリスクテークを誘発するのではないか」と懸念しているという。
資産バブルを防ぐために利上げすべきかどうかという問いは、長らく当局者にとって頭痛の種だった。ジェローム・パウエル議長は先月、金利を長く低く維持することを盛り込んだ新政策の枠組みを発表したが、カプラン氏が抱く危機感は、当局者の総意欠如により、新たな枠組みをやり遂げるFRBの能力や意欲にいずれ疑問符がつきかねないことを示唆している。
FRBの新たな戦略では、FRBは経済の変化に対して従来とは異なる対応を取る。FRBは目下、インフレ率が現在のように2%の目標を下回っている期間を相殺するため、当面2%を超えるインフレ率を目指している。これは、インフレが2%に達する以前の段階で予防的に利上げする従来の方針を事実上、撤回することになる。
新たな枠組みに関するFRBの声明では、物価と雇用に関する目標の達成は「金融システムの安定に左右される」とし、いわば「免責条項」のような一文を盛り込んでいる。
その後9月16日に公表されたFOMC声明では、「委員会の目標達成を阻害するようなリスクが台頭すれば」、金利をより低く長く維持するとの政策スタンスを調整するとの立場を示し、金融バブルのリスクについて暗にほのめかしている。
カプラン氏は3月、コロナ大流行で金融市場がほぼパニック状態に陥っていた状況を目にして懸念を強めたと話す。当時はあまりに投げ売りが膨らんだとし、金融市場が混乱に陥るまでに「一部の投資家は過剰なリスクを抱え込んでいた」。
ボストン地区連銀のエリック・ローゼングレン総裁も「ロブ(カプラン氏)の懸念の多くを共有する」と述べる。同氏は2022年までFOMCで投票権を持たない。インタビューでは「この政策の金融安定に関する側面を懸念している。向こう数年で対処する必要があるだろう」と語った。昨年には、金融安定を巡る懸念から、3度の利下げ決定にいずれも反対票を投じている。
パウエル氏は、資産バブルの発生を防ぐために利上げを活用する可能性を排除していないが、その見込みは低いとの考えを重ねて強調している。
今月にも「金融政策が防御の最前線であってはならない」と述べている。他の防御手段が実現しない、もしくは力不足であった場合には利上げするかと問い詰められると、「われわれが従来、行ってきたことではない」とし、そのハードルは高いことを示唆した。
1990年代半ばまでは、インフレ高進を伴う景気過熱がリセッション(景気後退)の引き金になってきた。FRBが利上げすると、個人消費は冷え込んだ。適切な政策金利を設定することで、FRBは物価安定と低失業という双方の目標を達成することができた。エコノミストはこれを「神が与えた偶然」と呼んでいる。
だが、パウエル氏は2017年の講演で、政策金利が2つの目標に加え、「金融システムの安定」という3つ目の目標も達成することにはならないとの認識を示した。
「金融政策は1つの手段であり、すべてに対処することはできない」。FRBの元エコノミストで現在はブルッキングス研究所に勤務するネリー・リャン氏はこう指摘する。
リャン、ローゼングレン両氏らは、議会がFRBかその他の規制機関にマクロプルデンシャル(金融市場全体の安定性を維持する)手段を付与すれば、FRBは新たな枠組みを円滑に実行できるとの立場だ。マクロプルデンシャル手段は、長期資産の原資手当てにおける短期借り入れへの過度な依存、高水準の債務といった問題により効果的に対処できるとされる。
こうした金融政策以外の手段が効果的であるほど、低金利を長期間維持する代償も低減するという。ローゼングレン氏は「イングランド銀行(英中央銀行)のように『家計や企業部門は過度な借り入れに依存しているか?』といった問題に取り組む権限を持った機関が米国には存在しない」と述べる。
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