過剰な繁殖による不幸な野良猫を増やさない地域猫活動が鳥栖市で広がりを見せている。今年に入って、地域猫活動に携わる三つのグループが旗揚げし、市内で初めてとなる保護猫の里親探しイベントも開かれた。ただ、地域猫活動は地元住民の理解なしには成り立たない。取り組みが成果を上げていくには活動への理解を社会全体で広げていくことが不可欠となる。
同市では昨年末、市内の施設に70匹以上の野良猫が住み着いている問題が判明。対応できるグループが市内になかったため、福岡県内のボランティアや市などが連携し、公益財団法人「どうぶつ基金」の助成事業を活用して猫の不妊去勢手術を行い、地域に戻した。
この問題を機に地域猫活動への機運が高まり、活動の受け皿になろうとグループが発足。連携の枠組みを生かして市はボランティアらと協力し、これまでに約10カ所で約100匹に不妊去勢手術を施し、地域に戻した。野良猫によるふん尿の害や鳴き声といった住民の苦情に対し、市はこれまで、餌やりをしている住民に指導するしか方法がなかったが、より具体的な対応が可能になったという。
地域猫活動は、(1)野良猫を捕獲する(2)不妊去勢手術を施す(3)地域に戻す(4)地域住民が一定の合意、ルールのもとで一代限りの命を餌やりやふんの清掃をしながら管理する、という一連の活動を指す。野良猫は子猫がカラスや野生動物に襲われ、交通事故などによる生命の危険が絶えず、道路上で見つかる猫の死骸は鳥栖市内だけでも年間100匹に上るという。このため、地域猫活動を通して見つかった子猫などは一時的にグループが保護し、保護猫として譲渡会などで飼い主を見つけている。
地域猫活動は、一部の猫好きが勝手に行うのではなく、住民に一定の理解を得ながら餌やりや管理ができるかが重要になる。鳥栖市では事前に地元区長に相談し、理解が得られた場合だけ実行に移している。ただ、活動の認知度はまだ低く、集合住宅では規約上困難な場合もあるといい、理解の浸透が求められる。
県の猫の飼養ガイドラインは「終生飼う」「完全屋内飼いに努める」「不妊去勢手術をする」などと求めており、保護猫もこれらを守れる飼い主に譲渡している。それでも野良猫が絶えない背景には、猫の繁殖力の強さや飼い主のマナーの問題がある。保護猫活動に携わる関係者は、多いときは週に数件のペースで「保護した猫を、預かってもらえないか」などの相談があり、野良猫は身近な問題で「どこも似たような状況ではないか」という。また、鳥栖市内では5月、子猫2匹がリュックに入れて捨てられているのが見つかり、「動物の虐待や遺棄は犯罪」と市報で注意喚起した。
地域猫活動は市議会でも取り上げられ、議員が三養基郡みやき町などが行っている市町独自の不妊去勢手術費の助成やふるさと納税制度を生かすアイデアを提案した。えさ代や猫砂代、けがをした猫の治療費などは各グループが負担しており、彼らの活動が継続できるよう支援策を求めた。
県内の保健福祉事務所に収容された猫の殺処分は2022年度に88匹(うち自然死62匹)と19年度の307匹から減少し、譲渡数の増加や不妊去勢手術費の助成などの効果とみられる。地域猫活動の理解をさらに広げて殺処分をなくし、人と猫が共生できる社会を目指したい。(樋渡光憲)
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