[東京 11日 ロイター] - 日銀による早期の政策修正への思惑が浮上し、株式市場では戸惑う声が多数聞かれる。デフレ脱却への期待感はあるが、まだ確信とまではいえず、性急な政策修正があれば昨年12月の修正時のような株安になりかねないと警戒されている。不動産株の反応が、市場の織り込みの「リトマス試験紙」になるとの見方もある。
「日銀の政策修正を織り込むような物色だ」。松井証券の窪田朋一郎シニアマーケットアナリストは、11日のセクター別の動向をこう分析する。
11日の現物債市場で新発10年国債利回り(長期金利)は0.705%と、2014年1月以来の高水準に上昇。金利先高観から銀行や保険などの金融株が買われた一方、不動産株やグロース株は軟調となった。ドル/円は一時145円後半へと円高方向に振れ、輸出関連株の一角も売られた。日経平均(.N225)は一時200円安に下落した。
日銀の植田和男総裁のタカ派寄りと受け止められたインタビューが週末の新聞に掲載され、東京市場では政策修正への思惑が強まった。
読売新聞が9日付で掲載したインタビュー(6日実施)では、植田日銀総裁は「マイナス金利の解除後も物価目標の達成が可能と判断すれば(解除を)やる」としたほか、来春の賃上げ動向を含め「年末までに十分な情報やデータがそろう可能性はゼロではない」などとし、従来よりタカ派寄りと受け止められた。
<デフレ脱却に確信もてず>
昨年12月の政策修正時には、デフレ脱却の期待が盛り上がりを欠く中で、日銀総裁交代後に政策正常化が早まりかねないとの思惑から金融株が買われた。一方、金利負担増の連想から不動産株が下落したほか、円高が進行し輸出関連株の一角も売られた。
「デフレを脱却しインフレに移行することに市場の確信があれば、マイナス金利解除による株価へのネガティブインパクトは限定的」(東洋証券の大塚竜太ストラテジスト)との見方がある。「警戒されるのは、脱デフレの確信がない中での性急なマイナス金利解除だ」(りそなアセットマネジメントの戸田浩司ファンドマネージャー)という。
株式市場がどの程度、先行きのインフレへの期待を織り込んでいるのか、リトマス試験紙のひとつと目されるのが金利動向に敏感な不動産株の反応だ。不動産株は8月後半から脱デフレを先取りするかたちで上昇基調にあった。日銀修正の思惑が短期筋の利益確定の口実になったのは「インフレに対する市場の確信がまだ未熟なためだろう」(東洋証券の大塚氏)との声がある。
本来、インフレは資産価格の上昇を通じ、不動産株にはプラスに作用しやすいが「コストプッシュのインフレから、内需の強さに伴うデマンドプルのインフレに移行しなければ、インフレによる業績押し上げ効果は期待しにくく、金利が上昇する局面では不動産株はやはり売られやすいだろう」(三菱UFJ国際投信の石金淳チーフストラテジスト)とみられている。
平田紀之 編集:石田仁志
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