Thursday, November 3, 2022

難治性の気管支喘息に新たな生物学的製剤 - 日経メディカル

 2022年9月26日、気管支喘息治療薬のテゼペルマブ(遺伝子組換え)(商品名テゼスパイア皮下注210mgシリンジ)の製造販売が承認された。適応は「気管支喘息(既存治療によっても喘息症状をコントロールできない重症または難治の患者に限る)」、用法用量は「成人及び12歳以上の小児に1回210mgを4週間隔で皮下に注射する」となっている。

 気管支喘息は、「気道の慢性炎症を本態とし、変動性を持った気道狭窄(喘鳴、呼吸困難)や咳などの臨床症状で特徴付けられる疾患」と定義されている。治療は、吸入薬を用いた薬物療法が基本で、加圧噴霧式定量吸入器(pMDI)やドライパウダー吸入器(DPI)などが用いられている。国内外のガイドラインでは基本治療薬として、抗炎症作用を有するフルチカゾンプロピオン酸エステル(フルタイド)などの吸入ステロイド(ICS)が推奨され、重症度に応じてサルメテロールキシナホ酸塩(セレベント)などの長時間作用性β2刺激薬(LABA)、チオトロピウム臭化物水和物(スピリーバ)などの長時間作用性抗コリン薬(LAMA)などを併用する。また、これらの治療で効果不十分な患者に対しては、生物学的製剤として抗IgE抗体のオマリズマブ(遺伝子組換え)(ゾレア)、抗IL-5抗体のメポリズマブ(遺伝子組換え)(ヌーカラ)、抗IL-5受容体α抗体のベンラリズマブ(遺伝子組換え)(ファセンラ)、抗IL-4/13抗体のデュピルマブ(遺伝子組換え)(デュピクセント)が使用されている。しかし、重症喘息はその複雑性により、多くの患者では不明確あるいは複数の炎症機序を有しており、既存の生物学的製剤に適さない場合、良好に反応しない可能性も指摘されている。

 これまでの研究結果から、炎症カスケードの起点となる胸腺間質性リンパ球新生因子(TSLP)は、主として上皮細胞から生産されるサイトカインであり、呼吸器感染症、アレルゲン、たばこ、排気ガス、冷気などの外的因子の刺激によって産生が亢進される。TSLPは、獲得免疫細胞への作用(Th2細胞の分化)および自然免疫細胞への作用(2型自然リンパ球[ILC2]の活性化)を介してアレルギー性炎症など複数の炎症経路を活性化すると共に、気道過敏性を誘導し、重症喘息患者の増悪に関与していることが報告されている。

 テゼペルマブは、TSLPを標的とするヒト抗TSLPモノクローナル抗体である。ヒトTSLPに結合し、ヘテロ二量体のTSLP受容体との相互作用を阻害する。外的因子の刺激によって気道上皮から産生されるTSLPの活性を直接阻害することで、アレルギー性炎症や好酸球性炎症など複数の炎症経路をブロックし、さらに気道過敏症を改善することで、重症喘息患者の増悪を抑制すると考えられている。また、製剤学的特徴として針刺し防止機能付きのプレフィルドシリンジとなっている。

 中用量または高用量のICSおよびその他の長期管理薬で治療してもコントロール不良な成人および12歳以上の小児患者を対象とした第III相国際共同臨床試験(NAVIGATOR試験)において、同薬の52週投与時までの有効性および安全性が確認された。海外では2022年9月時点で、欧米、スイス、カナダおよびブラジルで承認されている。

 副作用として、主なものは注射部位反応(紅斑、腫脹、疼痛など)(1%以上)、発疹、関節痛、咽頭炎(各1%未満)であり、重大なものは投与開始数時間以内または遅発性(数日後)のアナフィラキシーなどの重篤な過敏症、冠動脈障害などの心臓障害の可能性があるので十分注意する必要がある。

 薬剤使用に際しては、下記の事項についても留意しておかなければならない。

●最新のガイドライン等を参考に、中用量または高用量のICSとその他の長期管理薬を使用しても、全身性ステロイドの投与等が必要な喘息増悪を来す患者に同薬を追加投与すること

●寄生虫感染を起こしている患者では、同薬の投与開始前に寄生虫感染を治療すること。また、同薬投与中に感染し、抗寄生虫薬による治療が無効な場合は同薬の投与を一時中止すること(「特定の背景を有する患者に関する注意」参照)

●医薬品リスク管理計画書(RMP)では、重要な潜在的リスクとして「感染症」「悪性腫瘍」「免疫原性」「心臓障害」が挙げられている

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