米国で黒人男性ジョージ・フロイドさん=当時(46)=が白人警官の暴行で死亡した事件から25日で1年。悲劇を機に連邦議会では警察の過剰な実力行使を規制する法案が審議されているが、警察力の低下を恐れる一部世論もあり成立は不透明な状況だ。改革が難航する背景には、米社会に
◆フロイドさん事件から1年…25日までの可決目指す
「バイデン大統領は警察改革が立ち遅れていると固く信じている。有色人種は常に危害を加えられる恐怖の中で生きるべきではない」。サキ大統領報道官は今月中旬、ホワイトハウスでの記者会見で改革の進展を問う質問に答えた。
バイデン氏が「この国の魂を汚す」と嘆く人種差別の克服に向け、事件後に民主党が議会提出した「ジョージ・フロイド警察活動の正義法案」。首絞めなどの危険な拘束術を制限するほか、差別的な取り締まりや違法行為が疑われる警官を刑事裁判にかけやすくし、警官の実力行使に対して広く認められてきた民事面の免責範囲も狭めるといった画期的な内容だ。
サキ氏は「大統領は、フロイド氏が亡くなった25日までに法案が可決されるのを望んでいる」と強調した。
◆支持者に警官が多い共和党は抵抗
だが、法案は3月に民主党多数の下院を通過したものの、共和党と勢力が
「この法案はわれわれの仕事を困難にする」。米東部のある州で凶悪犯罪などの取り締まりに当たる男性警官(28)は違和感を隠さない。経験上、逮捕時などに抵抗する容疑者は珍しくなく「いざという時、警官が力の行使をためらえば、事態が悪化することもある」と考えるからだ。
非営利団体「米法執行官記念基金」によると、昨年までの10年間に職務で死亡した全米の警官は発砲だけで516人。男性警官は「自分にも撃たれて死んだ同僚がいる。フロイドさん事件で銃は使われなかったが、われわれは常に相手が銃を持っているかもしれないと教えられているし、そう警戒している」と話す。
◆人口以上の数の銃が民間に流通
約3億3000万人の人口に対し、4億丁もの銃が民間に出回るとされる米国。ジョン・ジェイ刑事司法大のデビッド・ケネディ教授は「この国の銃のまん延が警官の過剰暴力につながっていることは明らかだ」と指摘する。とりわけ「白人中心の警察組織を信用しない黒人社会は自衛のために銃を持ち、結果として銃犯罪も多い」として、警戒する警官による行きすぎた取り締まりを生みやすい土壌があると見る。
相次ぐ乱射事件の影響もあり、バイデン政権は犯罪に使われやすい自作銃の規制など銃問題への取り組みを始めたが、本格化はこれから。ケネディ氏は「警察と銃という2つの改革を同時に進めながら、黒人社会との信頼を築いていくことが必要だ」と訴えている。
ジョージ・フロイドさん事件 昨年5月25日、中西部ミネソタ州ミネアポリスで、偽札使用の通報を受けた白人警官(45)=事件後免職=が、路上でフロイドさんの首を9分29秒間、膝で押さえつけ死亡させた。現場の映像は、黒人など人種的少数派に対する警官の差別的で過剰な暴力の象徴と見なされ、「ブラック・ライブズ・マター(黒人の命も大切だ)」と叫ぶ抗議デモが拡大した。元警官は今年4月、第2級殺人罪など3つの罪で有罪となった。
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