中国で交通違反に科せられる罰金の総額が昨年、3000億元(約5兆1000億円)に達した。監視カメラなど電子機器による交通違反取り締まりが普及したことに加え、財源として罰金に依存する地方政府が少なくないためだ。過剰ともいえる交通違反取り締まりに対し、トラック運転手などから恨みの声も出ている。(北京・中沢穣、写真も)
◆トラック運転手の遺書が話題に
4月上旬、河北省で農薬を飲んで自殺したトラック運転手の男性(51)の遺書がネット上で話題となった。
「自らの死によって、指導者にこの問題を重視するよう促したい」
男性は、中国版衛星利用測位システム(GPS)「北斗」に基づく車両測位機器の接続が切れていたとして2000元(約3万4000円)の罰金を科されていた。遺書では「一介の運転手がどうやって(切れていたことに)気付くのか」との憤りも記されていた。
中国メディアによると、当局はこの件で対応に問題があったとは認めていないが、4月中旬に警察関係者らを集めて開かれた「全国公安交通管理工作会議」では、「過度な法執行を厳禁する」と異例の言及があった。男性の自殺が念頭にあったとみられる。
◆監視技術の発達が背景に
この会議では「(罰金による)利得目的の法執行」も禁じる方針が示された。今年3月の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)の期間中、全人代代表の
中国の罰金総額は19年6月までの1年間で2110億元という報道もあり、激増しているとみられる。中国のシンクタンク「新思界産業研究センター」の報告書によると、監視カメラなどの「電子警察産業」は18年に市場規模が100億元を超え、19年には132億元に達した。監視技術の発達によって、スピード違反や違法駐車のほか、進入禁止やUターン禁止の違反などを確実に取り締まれるようになった。
韓氏は「電子的な警察装置が乱用されており、いかなる危険も招かない(ささいな)違反に対し、高額な罰金が科せられている。交通安全の推進に役立たず、かえって危険を招きかねない」と批判した。
◆収入の3分の1が罰金という自治体も
国営新華社発行の評論誌「半月談」(電子版)によると、東北地方のある県(日本の市や郡に相当)では、一般予算収入の1億元強のうち、3分の1の3000万元以上が交通違反の罰金でまかなわれていた。山間部にあるというこの県では、炭鉱からの石炭輸送ルートである主要道路に監視カメラが10台設置されており、罰金の「供給源」となっている。
同誌はトラック運転手の不満として、県内の道路では「制限速度が時速60キロから突然30キロにかわる」「カメラがカーブや樹木に隠されて設置されている」などと伝えた。
北京市内でも、交通違反を取り締まる監視カメラは増えている。北京市交通管理局によると、21年3月までの1年間だけで9145カ所の監視装置が新たに設置された。市中心部のある道路では「違法にクラクションを鳴らした」車両のナンバーが電光掲示板に表示されている。罰金は100元だ。
同誌は、巨額の罰金収入は地方政府には捨てがたく、「一部の地方政府は、罰金収入の実態や使い道について意図的に公開していない」と指摘した。先述の警察関係者の会議でも「交通監視設備の使用における問題を調査して改める」ことが議論された。
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