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前回写真を紹介した米航空宇宙局(NASA)の火星探査車「パーシビアランス」着陸時のパラシュートには、赤白2色の派手な模様がありましたね。それは実は暗号で「Daremightythings(あえて壮大なことを)」と読めます。赤を「1」、白を「0」と2進数に置き換えて、模様を中心から外に向かって読んでいくと、そのようなアルファベットが浮かび上がります(図1)。この言葉は、「失敗を恐れずに大きな挑戦をすべきだ」と国民に訴えた第26代米国大統領セオドア・ルーズベルトの演説に由来しており、NASAのジェット推進研究所(JPL)が合言葉にしています。
それはさておき、「パーシビアランス」は、長さ約3メートル、幅約2.7メートル、重さ約1トン(図2)。6個の車輪を使って地表を移動し、岩石や大気中のサンプルを採取するのですが、採取したサンプルは「パーシビアランス」が保管しておいて、近い将来、別の探査機を「パーシビアランス」の近くに着陸させ、採取済みのサンプルを地球に持ち帰る計画です。
NASAはさる3月4日、「パーシビアランス」の移動試験を初めて実施しました。手始めに、まず前に4メートル進み、その場で左に150度方向を変え、2.5メートルほど後退しました。わずか6.5メートルながら、慎重に33分かけて移動したわけです(写真)。JPLのチームでは、この最初の走行テストが「信じられないほどうまくいった」そうで、今後の探査に大きな希望が持てるでしょう。
これまでNASAは、40年以上にわたる探査の結果、「火星はかつて水が存在した惑星である」と確信するに至っています。火星表面には水が流れた跡や、水の作用で生成する鉱物が存在することも確認されており、約40億~35億年前の太古の火星には液体の水があったことが確実視されています。しかし、生命が生き抜くための条件となる当時の水の成分や水質などは、いま世界中の科学者が懸命に調べているところです。
本格的に生命の痕跡発見にチャレンジする史上初の探査機である「パーシビアランス」は、四つの科学目標を掲げています。(1)微生物が生きることができたに違いない過去の環境を明確にする(2)過去の微生物の痕跡を岩石の中から見つける(3)サンプルを採取して火星の表面に保存する(4)火星の大気から酸素を生産する実験(人間が住む準備)。今後、他国の探査機の成果とともに、「パーシビアランス」の調査の進展は、皆さんにできるだけお伝えします。
なお、NASAは今年の春の終わりから夏の初めにかけて、もう一つ、非常に面白い実験を火星で試みます。次回はそのことをお話ししましょう。お楽しみに。(つづく)
的川泰宣さん
長らく日本の宇宙開発の最前線で活躍してきた「宇宙博士」。現在は宇宙航空研究開発機構(JAXA)の名誉教授。1942年生まれ。
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「的川博士の銀河教室」は、宇宙開発の歴史や宇宙に関する最新ニュースについて、的川泰宣さんが解説するコーナー。毎日小学生新聞で2008年10月から連載開始。カットのイラストは漫画家の松本零士さん。
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