地球を離れて43年、ボイジャー2号は今日もゆく…。
今年の3月中旬以降、地球のミッションオペレーターと無人宇宙探査機ボイジャー2号はずっと音信不通でした。しかし新しいハードウェアのテストを実行したところ、NASAの深宇宙通信情報網(DSN)が順調にアップグレードされている兆候が確認できたのです。
10月29日、NASAは7カ月ぶりにボイジャー2号へのコマンド送信が成功したと発表しました。そして今回の通信に使われたのが、ボイジャー2号と唯一通信できるパラボラアンテナ「深宇宙ステーション43(DDS43)」です。1977年に打ち上げられたボイジャー2号は現在、地球から約187億9200万kmのはるか彼方を航行中。ちなみに姉妹機のボイジャー1号はさらに先を行っており、人工物として最も遠い宇宙を移動しているんだとか。
ボイジャー2号との通信がオフになったのは、DDS43に修理とアップグレードが必須だったため。当初の予定では2021年2月までオフライン状態が続くと見込まれていました。しかし先日、新しいハードウェアの初期テストを実施したところ、ボイジャー2がコマンドどおりに“hello“と返してきたのです。予定より3カ月も早く通信再開したことになりますので、これはかなりの朗報です。
43年前に地球から飛び立った無人探査機ボイジャー2号は7カ月の空白期間を経て、自らの健康状態と重要な化学情報を返してくれたのです。ボイジャー2号は現在、時速5万5,160kmで太陽圏を移動しながら、広大な、そして泡のような太陽系外の領域を探索しています。
深宇宙通信情報網とは、世界中にある無線アンテナの集合体のこと。その主な使命は、月よりも遠くにいる宇宙船と通信すること。オーストラリアのキャンベラ深宇宙通信施設には、このシステムの地上局となるDDS43が置かれていますが、設置されたのは今から48年も前。だからこそリフレッシュが急務だったのです。幅34メートルの無線アンテナはこれまでにも数回アップグレードされましたが、今回ほど長期にわたってオフライン状態になるのは30年ぶりのことでした。
NASAの宇宙通信およびナビゲーション(SCaN)プログラムの運用マネージャーであるフィリップ・ボールドウィン氏は、「DSS43アンテナは非常に特殊なシステムで、世界を見渡しても、同様の施設は他に2つしかありません。その1つを1年間も停止させることはボイジャーにとっても、NASAの多くのミッションにとっても、理想的な状況とはいえません」と声明内で述べています。「NASAでは、アンテナが今後のミッションで引き続き使用できるように、アップグレードの実施を決定しました。およそ50年前のアンテナですから、後手にまわるよりは積極的に重要なメンテナンス対応をしたほうがよいでしょう」。
こうした修理やアップグレードは、火星を目指す「マーズ2020」や月面着陸計画のアルテミスミッションにとって有益であることは間違いありません。もちろん、いつか火星に有人飛行する際にも、役立つはずです。
とはいえ、ボイジャー2号と交信できるパラボラアンテナが地球上に1機しかないのは少々意外ですよね。実は、これにはちゃんとした理由があります。 30年前、ボイジャー2号は1989年に海王星の衛星トリトンに最接近しました。その際、ミッションオペレーターは海王星の北極付近に探査機を向かわせる必要がありました。そうなると、ボイジャー2号は平らな軌道面に対して南方向に移動しなければならず、それ以来ずっとこの方向にすすんでいます。
この操作の結果、ボイジャー2号は軌道平面のはるか南を航行しており、地球の北半球にある無線アンテナでは通信できなくなってしまったのです。一方、姉妹機のボイジャー1号は土星を過ぎてから別の経路をたどったため、北半球の2つのアンテナからも送信することができます。
DSS43は南半球で唯一、ボイジャー2に到達するほど強力な送信機を搭載し、適切な言語を使用することができる装置でもあります。周波数でいうと、ボイジャー2へのアップリンクはSバンドで送信し、ダウンリンクはXバンドで受信します。
この通信施設が機能し続けているからこそ、ボイジャー2との双方向通信が復活したわけです。しかし、想像してみてください。何カ月も地球と交信することなく、黙々と宇宙を進み続ける無人探査機ボイジャーがいるのです。なんとも、ロマンチックじゃありませんか?
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