【東京】中国や日本の医師の一部が、新型コロナウイルスによる重症の肺炎患者の治療に副腎皮質ホルモン剤(ステロイド)を使用し、物議を醸している。世界保健機関(WHO)が臨床治験を除いてステロイドの投与を避けるべきだとしているからだ。
ステロイドは一般に炎症を抑える働きがある。そのため、新型ウイルス感染で重症の肺炎に陥った場合、過剰な免疫反応を抑える治療薬として医師の頭にはステロイドが思い浮かぶのだ。
医師らによると、ウイルスに感染した肺に対し、炎症はウイルスそのものより深刻なダメージを与える場合がある。医師の間では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による1万人余りの死者のうち相当な割合がこの種の反応に関連している(すなわち実質的に自分自身の体を攻撃してしまう)との見方もある。
「致死性はウイルスに誘発された超炎症状態(hyperinflammation)が原因かもしれない」。英国の医師グループは3月13日、新型ウイルス感染症の初期の中心地だった中国・武漢の患者の調査結果を引用し、医学専門誌ランセットにこう投稿した。さらに、「治療法の選択肢としてステロイド」や他の抗炎症薬が含まれると述べた。
武漢大学中南医院で呼吸器・救命救急医療責任者を務める程真順氏は、同病院の医師らが「高熱があり、酸素レベルが突然低下し、人工呼吸器が必要になった」患者の治療にこの考えを適用していると話す。こうした症例に「われわれは約4、5日間ステロイドを投与することにした。そして患者を持ち直させることができた」という。
しかしWHOは、重症急性呼吸器症候群(SARS)や中東呼吸器症候群(MERS)など他のウイルス性疾患を対象に実施された調査を引き合いに出し、ステロイドがそうした症例に有効だとの証拠はないとしている。
「有効性および潜在的な有害性が不明であるため、別の理由が示されない限り、副腎皮質ステロイドの一般的服用は避けるべきである」。WHOのCOVID-19治療に関する公式ガイダンスにはこう記されている。ガイダンスのステロイド関連の記述部分には「Don’t(禁忌)」を意味する赤字の「X」が付記されている。
一方、COVID-19患者の治療にあたるトロント大学サニーブルック保健科学センターのロバート・ファウラー氏によると、これまでの治験で示唆されたのは、ウイルス感染による肺炎で命の危険がある患者に対するステロイドの有効性は「どちらとも言えない」ことだという。
ファウラー博士の研究はWHOの勧告にも引用されている。同氏は絶望的な状況で何かを試そうとするのは人間の本質だが、臨床試験以外の医師の観察結果は証拠とは見なせないと述べた。
「目の前にいる人間に過度に影響されやすいものだ」と同氏は話す。「ペニシリンの作用くらい劇的に治癒しない限り、いま目にしていることが偶然かどうかを知るのは難しい」
ランセット誌では最近、英スコットランドのエジンバラ大学の医師らがステロイド使用に警鐘を鳴らしたことで、議論が起きている。同グループは2000年代初めにSARSが世界的に流行した際の調査結果を引用。それによると、ステロイド治療による副作用として糖尿病の発症や阻血性壊死(AVN)と呼ばれる骨壊死のリスクが挙げられている。
ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が2003年に実施した調査によると、数百人の中国人患者が、武漢の程氏をはじめ中国人医師がよく用いるステロイド「メチルプレドニゾロン」などの長期に及ぶ積極的投与が引き起こした副作用に苦しんでいた。
程氏は、おおむね4、5日以内に服用を中止するか服用量を減らし、副作用を防いでいると述べた。一方、SARSの場合は臨床医がステロイドの投与を1カ月以上続けたと述べていた。
中国の医師らはランセット誌に送った書簡の中で、エジンバラ大学のチームは曖昧な証拠に頼っているとした上で、低量から中程度の量のステロイドを慎重に投与すれば、患者の助けになる可能性があると述べた。
トロント大のファウラー博士によると、COVID-19に対するステロイドの治験は始まっているが、今のところ医師は一握りの症例から得た知見に頼っているにすぎない。
ステロイド「シクレソニド(商品名:オルベスコ)」は通常、気管支ぜんそくの治療に使われる吸入薬だ。クルーズ船ダイヤモンド・プリンセスが先月、日本に停泊した後、新型コロナウイルスに感染したと診断された3人の乗客にこの薬剤が試験的に投与された。
日本感染症学会のウェブサイトに投稿された症例報告によると、神奈川県の病院で治療を受けた3人の患者は、シクレソニドの高用量投与を受けるまで、酸素吸入の必要があった。患者の1人である73歳の女性は食べることも動くこともままならなかったが、投薬から2日程度で自力呼吸が可能となり、食事も取れるようになったという。
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「この薬はウイルスも抑え炎症も抑える。両方持っていることがわかった」。報告の共同執筆者である愛知医科大学の森島恒雄客員教授はこう述べた。同教授によると、他にも数人の患者が日本の病院でシクレソニドを投与されているという。医師らはシクレソニドの抗ウイルス作用が認められたと報告する一方で、その理由は不明だとした。この研究は学会の審査を受けた論文ではない。
森島教授は、シクレソニドは肺に直接吸入され、血流に入ることがほとんどないため、錠剤や注射のようなステロイドの全身投与でみられる副作用を引き起こす可能性は低いと述べた。だが一方で、薬剤そのものに副作用を引き起こす潜在性があることも指摘。例えば、口腔内の残留薬剤が原因の口内炎や、小児の長期服用によって低身長を引き起こす可能性があることなどだ。
厚生労働省はシクレソニドの観察研究に1億円規模の予算を充てている。同省は今月、日本でシクレソニドの製造販売承認を受けている帝人ファーマに対し、新型コロナウイルス感染患者の治験用として同薬剤を供給するよう要請した。
こうした議論において、「誰が間違っているというのはよくない。ある意味、皆正しい」と森島教授は話す。「主にどこを叩くかのストラテジーの問題。強い炎症を抑えるにはステロイドが効く。中国は炎症に重点を置いた」と述べた。
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