働く障害者への差別を禁じ、働きにくさを解消するための合理的配慮を企業に義務づける「障害者雇用促進法」。配慮の対象には、難病などを患い、病気でない人と同様に働くことが困難な人も含まれる。だが十分に知られておらず、「病気を明らかにすると、差別や不当な扱いをされるかも」と心配する患者は多い。企業の理解や相談しやすい職場づくりが求められている。 (佐橋大)
炎症性腸疾患(IBD)の患者らでつくるIBDネットワーク理事(就労支援担当)の仲島雄大さん(56)は20代で、IBDの一種、潰瘍性大腸炎になった。トイレに行く回数が極端に多いことに悩み、当時働いていた自動車整備の仕事から半年ほど離れた時期もあった。
患者の中には手術や入院治療が必要な人もいるが、今は医療の進歩で症状が治まっている期間が延び、通院や体調不良時への配慮があれば、普通に働ける人が増えた。「難病だと働けない、といった偏見を持たないで。病気があっても働くことを一緒に考え、誰もが働きやすい職場づくりのきっかけにしてもらえれば」と仲島さんは訴える。
一口に難病と言っても、働く上で何の配慮もいらない人から、就労が難しい人までさまざまだ。外見で分かる病気もあるが、疲れやすさや痛みなど見た目では分からない症状も多い。
障害者雇用促進法は、難病などの慢性疾患の患者で、働く上で配慮が必要な人を「その他の心身の機能に障害がある者」として、支援の対象に加えている。具体的には、病気というだけで昇進の対象から外すといった差別的な扱いを禁止。過剰な負担にならない範囲で、柔軟な働き方を認めるといった「合理的配慮」の提供を求めている。
ただ、企業の認識は不十分という。独立行政法人「高齢・障害・求職者雇用支援機構」(JEED)障害者職業総合センター副統括研究員の春名由一郎さんは「『障害者手帳を持つ患者だけが支援の対象になる』と誤認している企業が多い」と指摘する。
JEEDは、配慮が必要と認識されにくい「障害者手帳のない難病の人」の実態を明らかにしようと、一昨年9月から約1年かけて調査。手帳を申請していない難病患者約3400人に、生活の支障を聞いたところ、定期的な通院以上に、体調の崩れやすさ、痛み、免疫機能の低下を挙げる人が多かった。
例えば、「体調の崩れやすさ」では、生活に支障が出ると答えた人が半数以上いる=グラフ(上)=が、障害とは認識されにくい。春名さんによると、差別を恐れ、病気や症状について言い出せない患者も多いという。
病による疲れやすさや痛みを「怠けている」「自己管理の欠如」と誤解されたり、逆に「病気だから」と心配しすぎて患者に仕事を任せないといった過剰な反応につながったりすることも。調査では、手帳を申請していない患者の半数以上が「疎外感、孤立感がある」と答えた=グラフ(下)。
春名さんは「病気自体が知られていないことも多く、障害者でも健常者でもない立場が孤立感につながっている。調査結果を参考に、働きにくさを解消してもらえたら」と願う。仲島さんも「企業には、安心して病気のことを相談できる体制をつくってほしい。患者側もどんな配慮なら働けるのか、分かりやすく伝えることが必要」と訴えた。
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