Tuesday, February 21, 2023

最近よく聞くエラグ酸、脂肪低下や老化防止に効くって本当? - 日経バイオテク

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キーワードを専門誌記者がわかりやすく解説

過剰なヘルスクレームに対してFDAが警告

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(画像:123RF)

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 エラグ酸(Ellagic acid)は抗酸化物質であるポリフェノールの一種。果物や野菜に含有される機能性食品素材で、イチゴ、ラズベリー、クランベリーなどベリー類やザクロの果実などに多く含まれる。エラグ酸を含むサプリメントは数多く商品化されており、内臓脂肪の低下や老化防止などに効果があるとパッケージに表示されている。ただ、過剰なヘルスクレーム(機能性に関わる表示)に対して米食品医薬品局(FDA)は警告を発している。

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エラグ酸の構造(画像:123RF)

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エラグ酸の構造(画像:123RF)

 植物は紫外線など有害な光から身を守るため、フェノール系の化合物を体内で生成する。エラグ酸は植物体内で多数重合して、タンニンの形で存在する。ヒトが摂取すると、加水分解されてエラグ酸が再生成される。

 消費者庁が提供する機能性表示食品の届出情報検索によると、エラグ酸を機能性関与成分とする届出は101件ある(2023年2月時点、以下同)。そのうち販売中の商品は38件で、大半の製品は脂肪の減少効果を訴求している。例えばライオンが販売する「ナイスリムサポート エラグ酸のチカラ」は、「本品にはエラグ酸が含まれます。エラグ酸は肥満気味の方の体脂肪、血中中性脂肪、体重、ウエストサイズ、内臓脂肪の減少をサポートし、高めのBMI値の改善に役立つことが報告されています。肥満気味の方、BMI値が高めの方に適した商品です。」とパッケージに表示している。

FDAが過剰なヘルスクレームに警告

 エラグ酸は、実験細胞や小動物での実験で抗がん作用や抗酸化作用が多数報告されている。こうした点に着目して、米国では様々な栄養補助食品が販売されている。ただ、ヒトでの効果が実証されていないヘルスクレームを喧伝する販売業者も少なくない。FDAは2009年に「消費者が避けなければならない偽がん治療法」の1つとして、エラグ酸を含むサプリメントを販売している事業者に警告書を出している。

 イタリアUniversity of Sassariなどの研究チームは2005年、ホルモン抵抗性前立腺がん(HRPC)を対象とした化学療法にエラグ酸を併用する効果を検証する研究を行った。HRPC患者を、ビノレルビンとエストラムスチンリン酸の化学療法を受けた対照群(A群)と、化学療法レジメンにエラグ酸を併用した実験群(B群)の2つの試験群にランダムに割り付けた。その結果、エラグ酸を併用したB群はA群に比べ、全身毒性が減少し、好中球減少が統計的に有意で、客観的奏効(OR)、生化学的奏効(BR)、疼痛緩和やパフォーマンスステータスなどの総合的迅速臨床研究(ICR)で良好な結果を示した。ただし、全生存期間(OS)と無増悪生存期間(PFS)の改善は、この研究では見いだせなかった(DOI:10.1016/j.eururo.2004.12.001)。

ダイセルが細胞を再活性化する機能性素材として販売

 エラグ酸が体内で代謝された後の物質に着目した事例もある。そのうちの1つが、大手化学品メーカーであるダイセルの「URORICH(ウロリッチ)」だ。ダイセルは2021年5月、ザクロ由来の機能性食品素材ウロリチンA(商品名は「URORICH(ウロリッチ)」を日本国内で販売を開始した。

落葉小高木のザクロは赤朱色の花が咲き、果実は食用にされる。トルコから中東にかけて広く栽培されており、ザクロ果実の産出量トップは年100万t規模のイラン。日本では食用ザクロはほとんど栽培されていない(画像提供:ダイセル)

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落葉小高木のザクロは赤朱色の花が咲き、果実は食用にされる。トルコから中東にかけて広く栽培されており、ザクロ果実の産出量トップは年100万t規模のイラン。日本では食用ザクロはほとんど栽培されていない(画像提供:ダイセル)

 ウロリチンAはザクロ果皮から抽出したエラグ酸の腸内代謝物の1つで、オートファジー(細胞の自浄作用)やサーチュイン遺伝子(長寿に関わるとされる遺伝子)の活性化などにより細胞を再活性化するウェルエイジング素材として注目されている。ザクロなどを摂食することによってエラグ酸を体内に補給すると、腸内細菌叢の状態が整った場合には、腸内でエラグ酸がウロリチンAに変換される。ダイセルの調査によると、腸内でエラグ酸をウロリチンAに変換できる日本人は半数ほど。あらかじめエラグ酸をウロリチンAに変換したものを摂取すれば、ウロリチンAの健康効用が得やすいと考えられている。

 このウロリチンAを発酵生産した素材の事業化は、ダイセルが世界で初めてだという。同社は製法特許WO2018/124135など7つの特許を保有している。

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