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土曜日ですね。1週間おつかれさまでした。環境保護団体グリーンピースが発表した自動車メーカーの気候対策ランキングで、トヨタ自動車が最下位だったと話題ですね。ニュース配信サイトでは記事が短かったので、グリーンピースの発表を見てみました。
ランキングは、新車市場の80%を占める大手自動車メーカーを対象にしています。GM(General Motors)、フォルクスワーゲン、ルノー、ヒュンダイ(現代自動車)と起亜自動車、日産自動車、ホンダ、メルセデスベンツ、フォード、ステランティス、トヨタ自動車の10社です。
トヨタだけが悪く評価されたと思われたかもしれませんが、「全ての企業が十分な行動をとっておらず、十分な速度で変化していない」(グリーンピース)との講評です。また、「10社のうち7社がどの市場においても内燃機関車を完全に廃止する時期を決めていない」(同)と指摘しています。
ランキングは、化石燃料を使うクルマをどの程度廃止するか(10点満点、比重80%)、サプライチェーンの脱炭素化を進めているか(10点満点、比重20%)、持続可能な資源の利用に取り組んでいるかどうか、の3点で評価した上で、「気候政策を妨げるロビー活動の実施」「CO2排出規制への深刻な違反」によって減点しています。
その結果、下記のようなランキングになったようです。どのように減点されたのかという内容はもちろんのこと、ルノーと日産は分けるのに、ヒュンダイと起亜、ステランティスはひとまとめにしており、不思議なポイントは幾つかあります。特にステランティスは大所帯なのですが……。
ランキングの「化石燃料車の廃止」という項目で見るとトヨタよりも下にフォードがいますが、グリーンピースはフォードよりもトヨタを名指しで批判したいようです。実際には1社1社に対して調査結果をまとめていますが、目立つところに出すのはトヨタへの非難でした。
また、「トヨタやステランティスなどの多くの企業は、プラグインハイブリッド車(PHEV)の排出削減レベルが、公式の予測値よりも実際には相当低いにもかかわらず、自社の車両のCO2排出量を削減する手段として、依然としてPHEVに頼ろうとしている」(グリーンピース)とPHEVに対しても低く評価しているようでした。
ランキングのうち「サプライチェーンの脱炭素化」の点数はトヨタは5位でした。最下位がホンダ、トップはルノーという結果です。「資源の持続可能な利用」という項目では、電池のリユースや、電池の材料を回収するリサイクルに取り組んでいるかどうかを評価したようです。10社のうち、日産だけが「新規資源の使用量を減らし、再生材を使用する明確な目標を持っている」(グリーンピース)と高評価でした。
今回のランキングは指標があまりにも少ないので、「トヨタのHEVがEV26万台分の電池でEV550万台分のCO2削減を進めてきた」という実績が、グリーンピースに早く伝わるといいなあと思いました。CO2削減を評価する上では、トヨタが発表した実績のようにさまざまな切り口があるからです。また、品質トラブルが続いても、ほぼ新車の状態で中古車が流通しても、そのEVが売れていれば環境に貢献したと評価できるかは疑問です。EVの販売台数以外にも、正確で実態をとらえた指標を検討し続けていただきたいですね。
この他にも、興味深い指摘や講評がたくさん見つかりました。例えば、「鉄鋼生産の脱炭素化はまだ実現できていないので、SUVなど不必要に重いクルマの生産を直ちに減らして、鉄鋼の生産と消費を抑制する必要がある」という指摘がありました。SUVタイプのEVについてはどのように評価されるのでしょうか。SUVを買う人が非難される日も近いかもしれません。
また、新車市場も拡大してはならないという考えであるようです。「化石燃料車を廃止するために自動車市場自体が拡大してはいけない。自家用車を所有するライフスタイルは長期的に持続可能ではない。EV(電気自動車)も普及しすぎると新たなCO2排出源になる。公共交通機関やカーシェアリング、都市の再設計によって自家用車を減らす必要がある」(グリーンピース)。
大変にセンセーショナルです。文化や移動の自由も含めて自動車そのものが廃れるまで許さない人たちがいるのですね。将来の世代に、気候変動によって暮らしを脅かされない世界を残すことについては賛成です。しかし、運転してもしなくても楽しめるクルマの魅力や、自分の力でどこにでも出掛けられる自由も、後世に残ってほしいと願わずにはいられません。
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