手元資金は潤沢。増資の必要性に市場から疑問
CATLは世界的な「EVシフト」の加速を見据え、車載電池の生産能力を急拡大している。写真は2021年6月に四川省で稼働した新工場(同社ウェブサイトより)
中国の車載電池最大手の寧徳時代新能源科技(CATL)は、2021年8月に発表していた総額582億元(約1兆388億円)の第三者割当増資の計画を修正し、予定調達額を450億元(約8032億円)へと2割強引き下げる。11月15日、同社が投資家向けの情報開示で明らかにした。
CATLは、当初計画では調達した資金の7割強の419億元(約7479億円)を、生産能力増強のための5件のプロジェクトに投じる予定だった。さらに、70億元(約1249億円)を新技術の研究開発に、93億元(約1660億円)を運転資金にそれぞれ充当するとしていた。
しかし今回の計画修正で、同社は予定調達額を132億元(約2356億円)削減。その内訳は、運転資金への充当の見送りが93億元、生産能力増強プロジェクトのうち1件の中止が31億元(約553億円)、別の1件の投資予算見直しが8億元(約143億円)となっている。
過剰投資リスクへの懸念に配慮か
CATLの増資計画は、8月の発表直後から市場関係者の間で論議を呼んでいた。同社の決算報告書によれば、2021年9月末時点の現預金残高は807億3500万元(約1兆4410億円)と、手元資金は潤沢だ。また、同社は電池製造のサプライチェーンの上流から下流まで大規模な投資を続けているが、キャッシュフローに不足は見られない。このため、巨額の第三者割当増資の必要性を疑問視する声が上がっていた。
それだけではない。CATLの急激な生産能力増強に対し、過剰投資のリスクを指摘する向きもあった。車載電池の市場規模拡大とともに、製品の利益率は徐々に低下する。さらに将来、技術革新によって燃料電池などが台頭する可能性を考慮すれば、リチウムイオン電池の生産設備への性急な投資は戦略的失策となる恐れが否定できない。
当初の増資計画に関しては、CATLの株式上場先である深圳証券取引所も、同社に追加説明を求める質問書を送付していた。
本記事は「財新」の提供記事です
それに対する10月18日付の回答書で、CATLは「事業の急成長により、経営に必要な運転資金が増加しており、(投資拡大に伴う借り入れの増加で)会社の負債比率も年々上昇している。過剰な資金調達にはあたらない」と釈明した。しかし市場の疑念を払拭しきれず、今回の計画修正に至った可能性がある。
(財新記者:安麗敏)
※原文の配信は11月16日
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