Monday, October 18, 2021

【池袋暴走事故】遺族も苦悩 量刑下げた「過激な社会的制裁」 - 産経ニュース

収容手続きのため、自宅を出る飯塚幸三元被告=12日午後0時4分、東京都板橋区
収容手続きのため、自宅を出る飯塚幸三元被告=12日午後0時4分、東京都板橋区

東京・池袋で平成31年、乗用車が暴走し母子2人が亡くなった事故では、実刑判決を受けた男に対し、会員制交流サイト(SNS)などで苛烈な批判が渦巻いた。判決では、こうした状況が「過度な社会的制裁」とされ、量刑が減軽される理由の一つとなり、遺族は「事故の教訓を伝える妨げになってしまった」と苦悩を打ち明けた。専門家は、SNSにより過剰な正義感からくる「私的制裁」が行われやすくなっている危険性を指摘する。

量刑減軽の理由に

《上級国民爺さん》

《消えろ》

自動車運転処罰法違反(過失致死傷)の罪に問われて禁錮5年の実刑判決を受け、今月収監された旧通産省工業技術院の元院長、飯塚幸三受刑者(90)に、SNSではこんな投稿が相次いだ。

事故後、任意捜査の末に在宅起訴された飯塚受刑者は、公判中は一貫して「ブレーキとアクセルの踏み間違いはなかった」として無罪を主張。批判は激化し、インターネット上だけでなく、受刑者の自宅周辺を街宣車が周回して「日本国民の恥」などと罵声を浴びせたり、自宅周辺に動画投稿者が来るなどした。

判決では、こうした一連のバッシングが「過度な社会的制裁」とされ、「(被告側に)有利に考慮すべき事情の一つ」として、量刑が求刑(禁錮7年)を下回る一因となった。

飯塚受刑者は判決後「暴走は私の勘違いによるブレーキとアクセルを間違えた結果だったと理解した」などとするコメント発表、初めて自らの過失を認めた。

教訓伝わらない

「遺族として処罰感情は当然あった。量刑が減らされたのは悲しく思う」

妻の真菜さん=当時(31)、長女の莉子ちゃん=同(3)=を事故で亡くした松永拓也さん(35)は、飯塚受刑者へのバッシングが量刑に影響したことについて、こう振り返る。

その上で松永さんは「(飯塚受刑者への批判が過熱し)本来伝えるべきものが伝わらなかったのではないか、と感じた」と打ち明けた。

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