Friday, October 8, 2021

不十分な所信表明 岸田農政の具体策示せ - 日本農業新聞

 岸田文雄首相は8日、初の所信表明演説を行った。農畜産物の需給・価格の安定など、自民党総裁選で掲げた農政の方針の多くについて語らなかった。米対策も曖昧だ。農業者をはじめ国民に、間近に迫る衆院選で“岸田農政”の信を問えるよう、代表質問で具体的に表明すべきだ。

 首相の演説では、総裁選で訴えた、米対策を含む農政の方針や「新自由主義からの転換」などをどう肉付けし、具体化するかが注目されたが、不十分と言わざるを得ない。

 総裁選の公約と言える政策集で首相は①国産農畜産物の需要・価格の安定など、農業者の所得向上に向けた政策総動員②多面的機能の維持や食料自給率の向上③食料安全保障の強化――などを挙げた。新型コロナウイルス禍による価格の大幅下落が懸念されるとして米対策を特に取り上げ、「市場隔離を含めた十分な支援を検討」と明記した。

 だが演説での言及は、高付加価値化と輸出力強化、家族農業や中山間地農業の持つ多面的機能の維持にとどまり、米対策も「当面の需給の安定に向けた支援など、十分な対策を行う」と述べただけだ。

 新型コロナ対応で首相は「国民に納得感を持ってもらえる丁寧な説明」を基本とした。政策全般で実行することである。11~13日の代表質問では、特に農業者の関心が高く衆院選の争点にもなる米対策で具体策を示し、農業者が納得できるよう、それが「需給・価格の安定」をもたらす根拠を明らかにすべきだ。

 総裁選で首相は「新自由主義からの転換」を主張。演説では同主義的政策の「弊害が指摘されている」と述べ、主体性が弱まった。同主義的な農業政策として政府は、生産・流通の自由化や規模拡大、経営の企業化、認定農業者らへの経営支援の集中などを推し進めてきた。政策転換への決意を示す必要がある。

 演説で「国民の声を真摯(しんし)に受け止め、かたちにする」と表明。評価したい。安倍・菅政権の官邸主導の政策決定は、規制改革推進会議など官邸の政策会議の提言を生産現場の意向より偏重するきらいがあった。だが政策決定過程をどう変え、総裁選で訴えた同推進会議などの改組をどう行うか不明だ。

 日本農業新聞の農政モニター調査では、安倍・菅政権の農業政策への評価は概して低い。総裁選での首相の訴えは農業者の不満に応える内容を含み、政策転換が期待された。所信表明だけで、その姿勢が後退したとみられるのは首相も本意ではあるまい。

 衆院は14日解散される。与野党にとって代表質問は、衆院選で政権を選ぶ判断材料を、有権者に提供する重要な機会だ。首相にも質問者にも具体的な政策論議を求める。

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