Tuesday, July 6, 2021

<社説>国際課税合意 格差の是正につなげよ - 東京新聞

 日本のほか米国や中国を含む百三十カ国・地域が法人税改革で合意した。法人税の過剰な引き下げ阻止と巨大IT企業への課税強化が狙いだ。国際間の複雑な利害を乗り越えた合意は評価できるが、解決すべき課題も山積している。

 合意交渉は日米欧の主要国などが参加する経済協力開発機構(OECD)の主導で行われた。

 法人税については最低税率を15%とすることで企業誘致を目的とした引き下げ合戦に歯止めをかける。巨大IT企業を対象としたデジタル税関連では、当該国に拠点がなくても一定以上の売上高を条件に課税できるようにする。

 税制が国家の主権に委ねられることは当然だ。この原則を踏まえれば、国際協調を優先した今回の合意は極めて異例であり大きな一歩と評価すべきだろう。

 合意の背景には巨大IT企業の目に余る税逃れや国際的企業が法人税の低い国に拠点を移す動きへの各国国民の不満があった。今後、合意国はこうした民意を推進力に今年十月までに細目を煮詰め二〇二三年の実施を目指す。

 ただ合意の実効性を高める上で大きな課題も残っている。

 米IT企業を念頭に独自のデジタル課税を掲げる英仏に対し米国は反発しており対立は続いたままだ。中国は経済特区での最低税率の適用除外を強く求めているが、安易に妥協すれば特別扱いが火種になる恐れがある。

 米中が自国の利益を優先させ強硬な姿勢に転じれば合意は崩れかねない。米中には強く自制を求めたい。

 低い法人税率をテコに外国資本を受け入れているアイルランドとハンガリーが合意に加わらなかったことも懸念材料だ。両国に拠点を移す企業が激増するケースも想定できる。両国の参加を促すための説得作業を早急に本格化させてほしい。

 独占禁止法を活用したIT企業への監視強化を進める日本にとって合意は将来の税収増という形でも国益につながる。法人税の実効税率も現行29%超で下限設定は影響がない。各国間の利害調整役を買って出るなど大きな役割を果たすべきだ。

 公平な課税は世界的課題である格差是正の突破口になり得る。合意に魂を吹き込むため主要国がより柔軟で懐の深い姿勢で臨むよう重ねて期待したい。

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