Tuesday, April 11, 2023

中国が再び軍事演習もトーンダウン 総統選を前に台湾への対応をどう調整するのか - BBCニュース

グレイス・ツォイ、BBCニュース

Military vehicles of the Ground Force under the Eastern Theatre Command of China's People's Liberation Army (PLA)

画像提供, HANDOUT

中国はまたしても、台湾周辺で軍事演習を行った。ただ今回、中国政府はその内容をトーンダウンさせていたと、一部の専門家は指摘する。9カ月後に予定されている台湾総統選挙で野党・国民党(KMT)が勝利することが、中国の利益になるからだ。

ペロシ氏の訪台後、軍事演習は中国にとって「標準的手順」の一部になったと、台湾の国立政治大学の嚴震生教授は指摘する。「(中国側は)自分たちの立場を明示する必要があるものの、過剰な反応はできない」からだという。

鍵となるのはタイミングだ。

国共内戦の末、1949年に中国共産党が勝利し、中国国民党は台湾島へ逃れる羽目になった。しかしここ数十年でかつての敵同士は、「一つの中国」をめぐるあいまいな表現の「1992年コンセンサス」に対話の前提を見出すようになっている。

中国政府が強硬な言動を続ければ、中国からの独立志向が強い与党・民主進歩党(民進党)にとって最高の選挙運動になりかねないと、嚴教授は言う。

中国はアメとムチ戦略をとっていると、台湾・東呉大学の陳方隅教授は言う。中国は、台湾が「一つの中国」の原則に従えば、経済や文化などの交流を促進しようと約束する一方で、軍備増強を続けているからだ。

「中国政府は台湾の人々に、民進党に投票すれば戦争になるが、国民党に投票すれば平和が待っているというメッセージを発信したがっている」と、陳教授は付け加える。

この2つのバランスを取るのは難しい。しかし中国は、台湾への強硬姿勢を国内でも求められている。中国政府そのものが国民の間でナショナリズムをあおってきただけに、これは当然のことだと陳教授は言う。

Taiwan's President Tsai Ing-wen meets the U.S. Speaker of the House Kevin McCarthy, in Simi Valley, California

画像提供, Reuters

米台関係への影響

アメリカと台湾の政治家たちの過度な接近を阻止することが、中国の軍事演習の目的だとするなら、一定の成果をあげているといえる。

ペロシ氏が実際に台湾を訪れて蔡氏と会談したのに対し、蔡氏は中米歴訪後に経由地カリフォルニア州でマカーシー氏と面会する、いわゆる「トランジット外交」をとった。台湾は今回、マカーシー氏との会談をめぐる緊張を緩和するため対策を講じたようだ。

マカーシー氏は昨年7月、自分が下院議長に就任したあかつきには議会代表団を連れて訪台すると、意欲的だった。しかし今回、蔡英文政権は台湾の安全保障上の懸念から、会談場所をアメリカ国内にするようマカーシー氏を説得したのだと、英紙フィナンシャル・タイムズは情報筋の話として伝えた。

アメリカはまた、蔡氏が総統に就任してからアメリカでトランジットするのは7回目だとして、今回の会談を大ごとに見せないようにした。アメリカも台湾も、今回の会談を「訪問」ではなく、ストップオーバー(立ち寄り)あるいはトランジット(乗り継ぎ)だと表現している。

「アメリカにも台湾にも、なるべく目立たないようにしようという暗黙の了解がある」と、陳教授は言う。

それでも、アメリカが台湾との外交関係を断った1979年以降に、台湾総統がアメリカ国内で面会した相手のうち、マカーシー議長は政治家としては最高位だった。つまり台湾にとって、今回の会談は外交的成果になるのだという。

台湾防衛は

台湾問題は米中関係における最大の火種となっている。中国は自治権を有する台湾島を、自国の領土の一部とみなしているし、台湾を支配するため武力を行使する可能性を否定していない。

アメリカが台湾への支援を拡大する中、中国はアメリカが長年にわたり堅持してきた「一つの中国」政策を空洞化させていると非難している。

「一つの中国」政策のもと、アメリカは台湾ではなく中国政府のみを承認。正式な国交を中国と結んできた。

ただしこれは、台湾はいつか統一される、中国の不可分の一部だとする「一つの中国」の原則とは異なる。

アメリカの政策は中国政府の立場を支持するものではない。むしろ米政府はその政策の一環として、台湾との「強固な非公式」関係を維持してきた。台湾が自衛できるよう、武器の売却も続けている。

Map showing flight paths of Chinese aircraft around Taiwan
Presentational white space

アジア地域での米軍の再編の一環として、アメリカは11日からフィリピンと過去最大規模の海軍合同演習を実施している。

アメリカはまた、南シナ海にある4つのフィリピン軍基地へのアクセスを確保している。このうち3つの基地は、台湾に比較的近い場所に位置する。

中国の今回の演習は、台湾「封鎖」を想定したものだった。台湾国内の状況はというと、昨年8月の軍事演習の時と同様に市民は平静を保っている。

しかし、嚴教授は、台湾がうかつに誤った安心感に包まれることを懸念している。

8日には、中国軍の戦闘機や艦船台湾海峡の中間線(70年近く維持されてきた、中台の領土の非公式な境界線)を越えるなど、エスカレーションがみられた。

「中国は今後も演習を継続するかもしれない。そしてある日いきなり攻撃されたら、台湾はどう反応すべきか分からないはずだ」と、嚴教授は述べた。

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