今年4月に、女優の柴咲コウさんが「このままでは日本の農家さんが窮地に立たされてしまいます」(4月30日のTwitter。現在は削除)と警告したことが話題となり、結局通常国会では継続審議となった種苗法改正。この法案を、実家がイチゴ農家の菅義偉首相(政権)が、10月26日召集の臨時国会で成立させようとしている。
自民党の森山裕国対委員長(元農水大臣)は10月18日、「継続となっております種苗法も早く成立させないと国益を失いますので」として、成立を目指す考えを示した。
だが、この法律が逆に国益を損ねるという反対論も少なくない。「タネを制するものは世界を制する」という考えのグローバル種子企業を儲けさせ、日本の農家を窮地に追い込む“売国奴的改悪”とする見方もあるのだ。民主党政権で農水大臣を務めた山田正彦・元衆院議員(弁護士)は「成立すると、日本の農家に壊滅的打撃を与える恐れがある。臨時国会で与野党対決法案になるのは確実です」と見ている。
生まれ故郷・秋田の農村から上京、横浜で代議士秘書を経て市議から国会議員、そして総理大臣に登り詰めた菅首相を、メデイアは「ミスター叩き上げ」「苦労人」「庶民派」といったイメージで包み込んだ。
しかし一皮むくと、第二の故郷・横浜を海外カジノ業者に売り渡す旗振り役をする冷酷無情な“素顔”も持ち合わせていた。しかも生まれ故郷秋田を含む全国の農家を奈落の底に突き落としかねない種苗法改定を目論んでいるというのだ。
山田氏は菅首相の強権的体質についてこう続けた。
「農業分野でも菅首相は、TPPや種子法廃止や農業競争力強化支援法など大企業がますます富む新自由主義的な農業政策をゴリ押ししてきました。第二次安倍政権の官房長官時代、TPPに反対した全農の万歳章会長を辞任に追い込んだのは、菅首相と森山国対委員長と見られている。『政府の方針に逆らうものは排除する』という姿勢は、日本学術会議問題だけでなく、農業政策でも同じといえます」(山田氏)
◆柴崎コウさんも「きちんと議論がされて審議する必要」と指摘
ネット上での反対拡大で検察庁法改正が成立断念となった通常国会では、安倍政権の支持率が低迷。本格的な国会論戦直前で種苗法改正も継続審議となった。
柴咲さんが「『種苗法』改正が行われようとしています。自家採取禁止。このままでは日本の農家さんが窮地に立たされてしまいます。これは、他人事ではありません。自分たちの食卓に直結することです」とツイッターで問題提起。賛否両論が寄せられて第一稿は削除した後も、投稿理由を説明するこんな第二稿を発信した。
「種の開発者さんの権利等を守るため登録品種の自家採種を禁ずるという認識ですが、何かを糾弾しているのではなく、知らない人が多いことに危惧しているので触れました。きちんと議論がされて様々な観点から審議する必要のある課題かと感じました」
この連続投稿で拙速な種苗法改正に対する慎重論が急速に広まって、検察庁法改正と同様、成立断念となった。これを5月20日の『毎日新聞』は「『種苗法改正案』今国会成立を断念へ 柴咲コウさんの懸念ツイートで慎重論拡大」という見出しで、次のように報じた。
「自民党の森山裕国対委員長は20日、ブランド農産品種の苗木などを海外に持ち出すことを規制する種苗法改正案の今国会での成立を見送る方針を示唆した。農作物の自由な栽培が難しくなるとの懸念を野党などが示しているためで、記者団に『日本の農家をしっかり守る法律だが、どうも逆に伝わっている』と述べ、成立には時間が必要だとの認識を示した」
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October 22, 2020 at 06:31AM
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