Tuesday, December 3, 2019

“Pepper不要論”払拭なるか Pepperが接客するカフェ、渋谷に誕生 開発元が自ら運営 - ITmedia

“Pepper不要論”払拭なるか Pepperが接客するカフェ、渋谷に誕生 開発元が自ら運営 - ITmedia

 「Pepperを派手に展開するフェーズは終わったと考えている。今後は地に足を付けて事業に取り組む」――。ソフトバンクロボティクスの蓮実一隆取締役は、12月3日に開いた「Pepper PALOR」の内覧会でこう語った。

 Pepper PARLORは、商業施設「東急プラザ渋谷」(5日開業)に出店予定のカフェ。その名の通り、店内に多数の人型ロボット「Pepper」を配置し、Pepperが接客する。広さは420平方メートル、席数は162席と大規模だ。

 受付のPepperは顧客の表情を認識し、年齢・体調・表情に応じたメニューを提案する。ソファ席にPepperが同席し、話し相手になったり、タブレットのゲームアプリで一緒に遊んだりするコーナー「相席Pepper」も設ける。

photo 「Pepper PALOR」の店頭

ソフトバンクロボティクスが自ら運営

 店内にはPepperの他、人型ロボット「NAO」、掃除ロボット「Whiz」も設置する。NAOは特定の時刻になると、複数台で連携して一糸乱れぬダンスを披露する。Whizは閉店後と開店前の清掃を担い、店員の負担を軽減する。接客の一部と調理は人間のスタッフが担当するが、新ロボットを追加する可能性もあるという。

 店舗運営は、飲食事業者に各ロボットを貸し出す形ではなく、ソフトバンクロボティクスが自ら担う。蓮実取締役によると、この店舗の出店・運営も「地に足のついた取り組み」の一環だという。

 「ロボットがなくてもすてきなお店を目指している。主役はあくまでお客さま。おいしい料理を楽しめて、ふと横を見るとロボットが働いている店が理想だ」(蓮実取締役)

photo 人型ロボット「NAO」

“不要論”の影響で方針転換か

 同取締役がこうした堅実路線を強調する背景には、昨年来のPepperに対する“不要論”があるとみられる。

 同社はPepperを2014年にリリース。15年10月から法人向けモデル「Pepper for Biz」のレンタル事業をスタートし、18年10月時点で2000社以上の顧客を獲得したが、3年契約を更改する企業が少ないことを「日経XTECH」が指摘。同時期に「AERA dot.」もPepperを利用する企業の「3年前は目新しさがあったのですが、今となってはブームは過ぎ去り、Pepperを見かけても、多くの人がスルーしていきます」といった声を紹介する記事を掲載した。

 蓮実取締役は「契約数が減少している事実はない」と昨年の報道を否定しつつも、性能に賛否両論の声があることを認識していたといい、「かつてのPepperはトンチンカンなやりとりをしたり、会話中に『ごめんなさい、分かりません』と答えたり、急にノリノリになって矢継ぎ早に発話したりすることがあった。言語処理の精度に課題があった」と語った。

 ただ、「Pepperに課題があることは、やってみないと分からなかった。導入企業に怒られながらもトライアンドエラーをし、現在は言語処理の精度を大幅に改善できた」(蓮実取締役)という。「いろいろな意見を持つ方がいるが、それらを踏まえ、次の大きな挑戦として店舗を始めることにした」(同)としている。

新型「Pepper」の会話エンジンは「りんな」がベース

 Pepper PARLORの店内で使用するPepperは、3年ぶりとなるメジャーアップデートを施し、19年4月にリリースした「Pepper for Biz 3.0」。このモデルのPepperは、協業する日本マイクロソフトのAI「りんな」がベースの会話エンジンを搭載し、自然な会話を実現しているのが特徴だ。

 Pepper for Biz 3.0をネットワークに接続すると、ローカル環境で処理できない高難易度の会話があった場合に、その内容をクラウドプラットフォーム「Microsoft Azure」上に構築したデータベースと照合し、適切な返答を選んだ上で発話できる。複数の人間と接する際は、人数に応じて話す内容を変えることも可能だ。

 「Pepperは従来のように、事前にインプットしたストーリーに沿って話すことはない」「顧客には、店内でPepperと話すだけでなく、なでたり触ったりといったコミュニケーションをとって癒されてほしい」と蓮実取締役は自信を見せる。

photo 「相席Pepper」の模様。人数に応じて話す内容を変えることも可能という

堅実路線はどんな影響をもたらすか

 一連の蓮実取締役の発言を鑑みると、新モデルを起用した店舗の運営を通して、Pepperの機能改善を幅広くアピールする同社の狙いがうかがえる。法人向け事業においても、かつてのようにPepperのキャラクター性を押し出したプロモーションを打つのではなく、機能面を地道に訴求し、着実な顧客獲得につなげる考えのようだ。

 現時点で詳細は非公開だが、Pepperが接客した顧客のデータを、個人を特定できない形で収集し、今後のビジネスに生かす計画もあるという。

 同取締役は今後の法人向けモデルの戦略について、「派手じゃなくてもいい。これからは、ユーザーの課題を(Pepperなどのロボットで)1つずつ解決できるようにしたい」と繰り返した。ソフトバンクロボティクスの堅実路線は、Pepperの普及にどんな影響を与えるのか。今後の動向に注目したい。

photo 堅実路線はPepperの普及にどんな影響をもたらすのか

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2019-12-03 11:56:00Z
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