KNNポール神田です。
現在、Appleの時価総額は1.2兆ドルなので、1.8兆ドルのサウジアラムコは、Appleの1.5倍、世界ナンバーワンの時価総額企業へと躍り出た事となる。
1.5%の株式で、256億ドル(※2.5兆円)調達ということは、つまり、100%だったら1兆6,666億ドル(※166兆円)規模なんだ。そして、現在の時価総額は1兆8,770億ドル(※187兆円) これからは時価総額で外部にもサウジアラムコの価値が可視化できるようになる
※円換算は1ドル100円換算
■『サウジアラムコ』ってどんな会社?
『サウジアラムコ(Saudi Aramco)』とは、本来、「アラビアン・アメリカン・オイル・カンパニー(Arabian American Oil Company)」であり、かつては、アメリカ、ロックフェラーのスタンダードオイルが分割化した『セブンシスターズ』の傘下であった(1930年代)。1960年『OPEC(石油輸出国機構)』が設立され、産油国での国営化が進み、1988年からは、完全国営の「サウジアラビアン・オイル・カンパニー」(サウジアラムコ)が誕生する。そして現在、世界最大の保有原油埋蔵量、原油生産量、原油輸出量を誇る。
何よりも特徴は、サウジアラビア政府が98.5%の株式を握る政府の国営企業である。そしてサウジアラビアの政府といえば、絶対君主制国家なので、『サーウド家』の人々で構成されているといっても過言ではない。いわば、世界最高のパワーファミリー企業といえる。そして、アメリカ系ユダヤ資本とのつながりも非常に強い。
■発行株式の1.5%だけで調達額 256億ドル(※2.5兆円)の狙い
今回、サウジアラムコが上場したのは、サウジアラビア証券市場というサウジの国内でのドメスティックな証券市場。そして購入者のほとんどが、サウジの国内投資家であり、王族関係者=政府関係者が多い。つまり身内で買い支えた結果ともいえるだろう。なのでこの時価総額のイメージを持って、外国市場への布石としたいところだ。
本来、外国市場での上場(IPO)による資金調達が狙いであったが、まずは国内での少数株数(1.5%)での資金調達で、上場会社としての時価総額を客観的な数字として世界に見せていくシナリオではないだろうか?そして時価総額に裏付けられた信用を持って、世界の証券市場での資金調達が目的だと筆者は考えている。まずは、世界最高の時価総額としての認識の上においての新規事業への投資をアピールしたかったのではないか。
■一番の目的は脱・石油依存の『NEOM』構想
サウジアラビアは、2030年までに『VISION 2030』を掲げており、脱・石油依存の国家づくりに邁進している。ムハンマド皇太子がすすめるIT次世代都市構想『NEOM』のような新たなヴィジョンによる国家づくりのために莫大な資金を必要としている。
このNEOMプロジェクトは、サウジアラビアの紅海の地帯、2万5,900平方キロ(四国の1.4倍、九州の7割)の未開の土地にまったくゼロからの新都市を築き新たな国家を作る構想である。
『タクシーが空飛び巨大人工月が輝く。未来都市「ネオム」計画』には、5,000億ドル(約54兆円)必要なのだ。サウジアラビアのGDP6,500億ドルの77%に値する巨大プロジェクトである。
今回の国内IPOで、256億ドルの調達であったが、『NEOM』を実現するのは、あと20倍もの資金調達をサウジアラビアは、海外から必要としている。しかしながら、サウジアラビアのジャーナリスト、カショギ氏の殺害疑惑や、SVF(ソフトバンクビジョンファンド)の今後の流れもあるので、サウジアラビアは、海外市場での上場のタイミングを図る必要があるだろう。
2019-12-12 09:05:00Z
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