現在木星でミッションを行っているアメリカ航空宇宙局(NASA)の木星探査機「Juno(ジュノー)」が、日本時間2021年6月8日2時35分に木星の衛星「ガニメデ」へ最接近します。NASAのジェット推進研究所(JPL)によると、最接近時のガニメデ表面からの距離は1038km以下。これは2000年5月にガニメデへ接近した木星探査機「Galileo(ガリレオ)」の1000kmに次ぐ近さで、ジュノーは21年ぶりの近距離からガニメデを観測することになります。
ガニメデは水星よりも大きな直径5268kmの衛星です。過去の観測においてガニメデは独自の磁場を持つことが明らかになっており、その内部は氷、岩石、鉄が分化した層状の構造を成していると考えられています。「ジュノーには従来不可能だった方法でガニメデを観測できる一連の鋭敏な観測装置が搭載されています」と、ジュノーの主任研究員Scott Bolton氏は語ります。
ジュノーのミッションはもともと2018年までの予定でしたが、メインエンジンのトラブルにより軌道の変更が中止されたことで2021年7月まで延長されており、2021年1月には最長で2025年9月まで再延長されることが決まっています。ミッションの再延長にともない、4つのガリレオ衛星のうち「ガニメデ」「エウロパ」「イオ」の3つをジュノーがフライバイ探査する計画が明らかにされていました。
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JPLによると、今回のフライバイでは最接近の3時間前からジュノーに搭載されている科学装置による観測が始まります。「マイクロ波放射計(MWR)」「紫外線分光器(UVS)」「赤外線オーロラマッピング装置(JIRAM)」は、ガニメデの氷でできた外殻の組成や温度に関するデータを取得。地球から見てガニメデの背後を通過するジュノーから届いた信号の変化を分析する電波掩蔽(えんぺい)観測も実施されます。
また、これまで木星の驚異的な姿を撮影し続けてきたカメラ「JunoCam」は、惑星探査機「ボイジャー」やガリレオによる最高解像度に匹敵するガニメデの画像を撮影し、この40年以上のあいだに表面に生じた変化を探ります。たとえばクレーターの分布に変化が検出されれば、木星以遠の惑星を周回する衛星に衝突する天体の数を見積もる助けになるかもしれません。
なお、ガニメデをフライバイしたジュノーは軌道が変化し、木星を1周するのに要する期間が約53日から約43日に短縮されます。ジュノーは引き続き木星を周回しながら観測を継続し、2022年9月にはエウロパのフライバイ探査を行う予定です。延長ミッションにおけるジュノーの観測データは、NASAが準備を進めている「エウロパ・クリッパー」や、欧州宇宙機関(ESA)が主導し宇宙航空研究開発機構(JAXA)も参加している「木星氷衛星探査計画(JUICE)」といった、木星の衛星を探査する将来のミッションにも活用されることになります。
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Image Credit: NASA/JPL-Caltech
Source: NASA/JPL
文/松村武宏
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