Sunday, November 24, 2019

いまだに謎が多いテスラの「Cybertruck」、イーロン・マスクのプレゼンを分析して見えてきたこと|WIRED.jp - WIRED.jp

いまだに謎が多いテスラの「Cybertruck」、イーロン・マスクのプレゼンを分析して見えてきたこと|WIRED.jp - WIRED.jp

テスラが発表した電動ピックアップトラック「Cybertruck」のプレゼンテーションは衝撃の連続だった。そのデザインもさることながら、防弾仕様のはずが金属球で窓が割れてしまったのである。いつもなら技術やデザインについて饒舌になるマスクが詳細を明かさなかったことからも、とある疑問が浮上する。Cybertruckは本当に量産が実現可能なのか?

WIRED(US)

Cybertruck

IMAGE BY TESLA

テスラのチーフデザイナーであるフランツ・フォン・ホルツハウゼンが、電動ピックアップトラック「Cybertruck(サイバートラック)」の割れないはずの窓を金属球で割ってしまった瞬間は、11月21日(米国時間)夜のプレゼンテーションで最も気まずい瞬間だったかもしれない。だが、それが最も混乱を覚える瞬間というわけではなかった。

その瞬間は、イーロン・マスクがこの新しい電動ピックアップトラックを披露し終えたあとにやってきた。歓声を上げるテスラファンやストレスを感じていた記者たちに対して、マスクは楽しんでいくようにと伝えて舞台を去ってしまったのである。

この段階でテスラの最高経営責任者(CEO)がステージから去ってしまったのは、実に不可解なことだった。これまで「モデルX」や「モデル3」「モデルY」、そして家庭用バッテリーを発表した際に、マスクは設計やエンジニアリングについて特に強調していた。ところが今回の発表会に、それらは明らかに含まれていなかったのである。

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怪力を発揮する新モデル

ロサンジェルスにあるスペースXの本社で開催された25分のプレゼンテーションで、マスクはCybertruckの堅牢性について何度も語っていた。それはフォード「F-150」やゼネラルモーターズ(GM)の「シボレー シルヴァラード」といったピックアップトラックに挑むうえで重要な特徴である。

Cybertruckは、スペースXが宇宙船「スターシップ」に使っているのと同じステンレス合金でつくられており、9mm拳銃の銃撃にも耐えることができるという。ガラスも防弾仕様のはずだが、実際はそうではなかっただろうか。そうでなければ、フォン・ホルツハウゼン自身を“凶器”として登録しておくべきだろう。

Cybertruckには3つのグレードが用意される予定で、その主なスペックについてマスクはすらすらと話した。39,000ドル(約425万円)のベースグレードは走行距離が250マイル(約402km)で、牽引能力は7,500ポンド(約3.4t)。49,000ドル(約534万円)のグレードは走行距離が300マイル(約482km)で、牽引能力は1万ポンド(約4.5t)だ。

これらのふたつのグレードの生産は、2021年中に始まる。さらに1年待てるのであれば、1回の充電で500マイル(約805km)の走行が可能で、怪物なみの14,000ポンド(約6.4t)を牽引できる69,900ドル(約762万円)のCybertruckが発売される。

これらのスペックは、従来のピックアップトラックの能力に軽く匹敵するものだ。そのうえ14,000ポンドの牽引能力は、Cybertruckが市販車で最も有能なトラックになることも意味する。

明かされなかった技術的な詳細

今回マスクがしなかったのは、Cybertruckの詳細に関する説明だ。まずマスクは、この台形のクルマが22世紀のペーパーウェイトのようなデザインである理由を説明しなかった。オフロード走行において重要なアプローチアングルについては語ったが、リチウムイオンバッテリーから走行距離を稼ぐうえで欠かせないエアロダイナミクスについては話さなかった。

また、Cybertruckの最上級モデルで3つのモーターをどのように使うのか(フロントアクスルに1つ、後輪に1つずつでほぼ間違いないだろう)といったエンジニアリングについても言及しなかった。さらにテスラの半自動運転機能「オートパイロット」の話もなく、オートパイロットがピックアップトラックのドライヴァーにとって役立つ可能性についても語らなかった。マスクはCybertruckがF-150との綱引きに勝った映像を見せたが、対戦相手となったF-150のグレードについては言及しなかった。

比較対象として、17年に電動トラック「テスラ セミ」を発表したときのことを振り返ってみよう。マスクはこのとき、単に見た目の奇抜さのためだけでなく、具体的な改善という目的があって従来の形状を逸脱した18輪トラックを設計したと主張した。そして、エンジニアリングやデザインの詳細について説明したのである。

例えば、キャビンの中央に運転席を配したうえ、エンジンを取り除いて短くなった鼻先のおかげで視界を改善できたこと。ふたつのタッチスクリーンによって運転手が車両と作業の双方をコントロールできること。搭載されたセンサーやスマートなソフトウェアによるジャックナイフ現象の予防などだ。またマスクは詳細な数字と同時にトラックの走行ルートを示し、電気自動車EV)が従来のディーゼル車をしのぐことができるのだと説明した。

窓が割れたことでマスクは動揺?

これらはどれも、マスクのプレゼンテーションやテスラ車ならではの特徴でもある。だが、テスラ車の弱みは常に実用面に起因してきた。当初計画されていた発売の期限には間に合わず、コストは超過し、利益は当てにできず、品質は最高とはいえない。それにマスクは、Twitterで炎上したり、政府機関や赤の他人とのいざこざを始めたりして、テスラの本業を妨げてしまっている。

しかし、テスラ車は常にこれらの欠点を補ってきていた。テスラの長期的な見通しや評価額がいかに疑わしくとも、テスラは常に売り込みに成功してきた。

マスクは、テスラ車が最高のEVであるだけでなく、あらゆるクルマのなかでも最高であると人々に説得できる能力を生まれながらにしてもっている。実際にテスラはクルマのあらゆる機能や側面をつくり直してきたからだ。

しかし、今回の発表でステージに立ったマスクは、長年のベストセラーであるF-150より楽しくドライヴできるものとCybertruckを位置づける以上に、フォードのキャッチコピーである「Built Ford Tough」をからかうことに時間を費やしていた。

その理由は明確にはわからない。Cybertruckの発売は2年以上も先になるが、マスクがセミを初めて発表したときもそうだった。進行中のプロジェクトが多すぎる(セミや新型ロードスター、モデルYはすべて来年発売予定)ため、テスラはCybertruckに集中する時間がないのかもしれない。

しかし、いまやらなければならないことがあっても、マスクが新たなプロジェクトへの参画をやめることはない(ボーリングカンパニーがそうだ)。つまり、Cybertruckは“やっつけ仕事”だったのかもしれない。だとすれば、壊れてしまった窓の説明もつくだろう。もしくは(窓が割れたという)失態によるマスクの動揺が大きかったゆえに、うまく言葉が出てこなかったのかもしれない。

実現性には疑問

理由が何であれ、マスクは今回のプレゼンテーションにはあまり熱心ではなく、投資家も感銘を受けなかったようだ。発表翌日のテスラの株価は、6パーセント以上も下落してしまった。

テスラがCybertruckについて、少なくとも外見や素材を再考したのは確かだろう。だが、詳細に関する説明や熱の入ったプレゼンテーションがなかったことから、このトラックの実現性には疑問をもたざるをえない。

それに、テスラ車らしいという印象もなかった。人類にとって、いま路上を走っているどんなクルマよりもスマートで格好よく、速く、力強く、安全で、堅牢で、優れている──というマスクの従来の売り込み方ではなかったからだ。ことによるとマスクは、何か違ったものを提供することで“妥協”したのかもしれない。

※『WIRED』によるテスラの関連記事はこちら

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2019-11-24 06:00:00Z
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