
社説
ワクチン3回目接種 十分なデータ集め慎重に検討を
2021年9月20日(月)(愛媛新聞)
新型コロナウイルス対策で、厚生労働省はワクチンの3回目の追加接種を実施する方針を決め、専門家分科会でも了承された。時間とともに感染予防効果が低下する懸念があるためで、2回目完了から8カ月以降を目安にするという。
海外では既に3回目を開始した国もある一方、幅広い追加接種には専門家の間でも慎重論が根強い。国内ではまだ希望者への2回接種が途上にあり、まずは迅速に進行させるべきだ。3回目については予防効果や副反応のデータを十分に集め、慎重に検討する必要がある。
世界的にワクチン接種は進んでいるが、感染力の強いデルタ株が猛威を振るい、感染が再拡大している。接種後に陽性となる「ブレークスルー感染」も相次ぐ。3回目の接種は「ブースター」と呼ばれ、ワクチンメーカーなどは予防効果が再び高まるとのデータを発表し、有効性を訴えている。
接種で先頭を走るイスラエルは8月から実施。米国や欧州でも取り組みが進む。こうした状況を踏まえると、国内でも議論するのは当然だろう。
ただ拙速は禁物だ。追加接種に関しては、高齢者や重症化リスクが高い人だけでなく、一般の人にまで幅広く必要だと示すデータがそろっていない。
米食品医薬品局(FDA)幹部や世界保健機関(WHO)の専門家チームは、接種後に感染を防ぐ抗体が減っても、他の免疫細胞も働くため、重症化予防効果がただちに弱まるわけではないとの見解を出した。
米国は今月下旬にも3回目を始める方針だ。FDAの有識者委員会では、高齢者らには推奨する一方、16歳以上については副反応リスクのデータが不十分として反対意見が多い。英国やフランス、ドイツも対象者を限定している。日本は海外の動向をにらみ、科学的知見に基づき対象や時期を見極めたい。
政府の13日の発表では、国内で2回の接種を完了した人は人口の50%を超えた。ただ接種率は65歳以上が88%なのに対し、64歳以下は27%にとどまる。都道府県別では、トップと最下位で20ポイント近く差がある。
感染防止と経済活動を両立するためには、地域差の改善や若者の接種率向上が不可欠だ。喫緊の課題である2回接種の着実な進展に向け、政府は自治体を支援しなければならない。
ワクチン接種で見過ごせないのは、先進国と発展途上国の供給格差だ。限られた供給量を先進国が囲い込むと途上国で接種がさらに遅れ、多くの人命が失われる恐れがある。危険な変異株の出現や、コロナ禍の長期化にもつながりかねない。
WHOは公平供給の観点から3回目の年内実施を見合わせるよう各国に求めている。日本も参加した20カ国・地域(G20)の保健相会議では、途上国へのワクチン普及で連携することを確認した。世界全体で感染を抑え込むことが急がれる。
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