VAIO株式会社が9月28日に発表した「VAIO FL15」は、15.6型のフルHD(1,920×1,080ドット)ディスプレイを搭載したノートPC。これまでビジネス向け製品に特化していたVAIO株式会社として初となる、プライベートの利用シーンをターゲットとした製品だ。 【この記事に関する別の画像を見る】 ■ VAIOとして初の家庭向けノートPC 注目すべきはその価格。これまでVAIOのラインナップは、充実したインターフェイスや高高性能プロセッサを搭載するといったスペック重視のため金額も高かったが、VAIO FL15は本体のみで7万9,200円、Microsoft Offce搭載モデルでも10万4,500円と、10万円強の価格帯に設定されている。 価格を抑えつつ、プライベートでも利用できるスペックも特徴だ。プロセッサはVAIOとして初めてAMD製で「Ryzen 3 4300U」を採用。エントリー向けプロセッサながら性能は十分で、後述するがプライベートでの利用はもちろん、業務でも十分に活用できる。 メモリは8GBと控えめだが、ストレージは256GBとメモリに比べて大容量のPCIe SSDを搭載。ブラウジングや文書作成、Web会議など1つのタスクごとアプリを利用するには十分なメモリ容量を確保しつつ、カメラの静止画や動画を保存するために大容量のストレージを用意する、というバランスがいい。 HDMI×1、USB 3.0 Type-C×1、USB 3.0 Type-A×2と接続インターフェイスは充実。USB Type-CはUSB PDとDisplayPort 1.4にも対応しており、45W以上のUSB PDアダプタを利用した充電やUSB Type-C経由での外部ディスプレイ利用も可能だ。 ■ 家庭での利用に特化したバランスのいいスペック 同サイズでビジネス向けの「VAIO S15」と比べるとミニD-Sub15ピン光学ドライブが省略されたほか、インターネット接続はWi-Fi 6のみで有線LANは非対応。外部ストレージもSDカードではなくmicroSDカードに対応しているといった違いがある。 家庭内の利用であればミニD-Sub15ピンや有線LANはほぼ不要だろうし、ディスクドライブを使う機会も少ない。また、スマートフォンやNintendo Switchのデータをすぐに取り込めるという点で、microSDカードというサイズもホームユースには向いているだろう。 Webカメラは約92万画素の前面カメラを搭載。画素数はさほど高くないものの、自宅からWeb会議に参加するという程度なら十分だ。なお、Web会議サービスのZoomが提供する「バーチャル背景」はスペックが足りず本機では利用できない。 本体カラーはブラック、ホワイト、シルバーの3色。充実したカスタマイズが特徴のVAIOシリーズだが、F15については仕様が1種類のみでカスタマイズは非対応。Microsoft Officeの搭載を除けば選択できるのは本体色のみとなる。 出荷時の搭載OSはWindows 10だが、Windows 11の無料アップグレードも対象。アップグレードについては「いち早く対応する」としている。 本体サイズは約358.7mm×239.2mm×20.5mm(幅×奥行×高さ)、重量は約1.85kgと2kgを切った。S15の約2.25kgと比べてディスクドライブがないこともあり軽量化を実現している。バッテリ駆動時間は7.5時間を公称する。 今回試用したモデルは本体カラーがブラックで、つやのない質感がVAIOらいし高級感を感じる。一方で指紋が非常に残りやすく、人によっては気になるかもしれない。 ■ 実利用には十分快適なパフォーマンス これまでハイパフォーマンスを指向していたVAIOの新ラインナップとして、スペックが必要最低限に抑えられたVAIO FL15は、実際の利用感が気になるところだ。 まずはPCMark 10とCinebenchでベンチマークを測定。結果は良好で、ゲームや動画編集といった重い動作は難しいものの、ブラウジング中心の利用であれば十分なスペックだ。 ベンチマークでは分かりにくい実際の使用感を確かめるため、VAIO FL15を使って筆者の通常業務を行なってみた。 筆者の場合、普段はSlackを10個以上立ち上げつつクラウドストレージも3サービスを同時に起動、さらにブラウザは数十タブを開くのが通常のため、この使い方はFL15で想定されているであろう利用シーンからはほど遠い。 そのため今回はクラウドストレージをDropboxのみ、Slackはアプリをインストールせずブラウザで1、2サイトを表示し、Gmailは4アカウントを別タブで同時に起動という環境で業務を行なってみた。 朝から夜まで1日の作業をすべてFL15で行なってみたが、体感としては十分に快適。筆者はプロセッサがRyzen 9 5900HS、メモリ16GBのノートPCを業務のメインマシンとして活用しているのだが、前述のような環境であれば体感としてはほぼ変わらず、入力のもたつきなども感じられない。Ryzen 3搭載PCを使うのは初めてだったのだが、Core i 5相当のパフォーマンスだと感じた。 動画や静止画は編集しようとするとさすがに動作が重くなるが、動画を視聴する環境としては十分なスペック。ホームユースとしては非常にバランスのいいスペックだ。 ■ キーボードは打ちやすい。バッテリは自宅なら十分な駆動時間 ディスプレイの解像度は1,920×1,080ドットで、画素密度は141ppi。画素密度は高いとは言えないが、ホームユースであれば十分なスペックだろう。一方で発色は少し白が強めで、白基調のWebサイトでは輝度を落としても画面が見にくく感じることもあった。気になる人は別途フィルタなどを導入するといいかもしれない。 キーボードはテンキー搭載で、キーピッチは公称約19.05mm、キーストロークは約1.0mm。チルトアップ式のキーボードになっており、PCを開くとキーボードが斜めに浮き上がって入力しやすい。 キーも大きく文字入力は快適なのだが、テンキーとEnterキーの間が非常に狭く、Enterキーを押したつもりが隣の数字キーを入力してしまうことが多々あった。このあたりは慣れで対応できるとは思うが、Enterとテンキーの間はもう少し距離がほしいと感じた。 タッチパッドには左右ボタンを搭載。最近のPCは左右ボタンを排したタッチパッドのみの製品も多いが、スプレッドシート操作などアプリケーションによっては左右ボタンがあると格段に操作しやすいため、ドキュメント作成などの用途では嬉しい仕様だ。 バッテリ駆動時間は、輝度50%でWi-Fiに接続、YouTubeを連続再生したところ約6時間でバッテリが空になった。また、前述の作業環境で使用した際は約3時間でバッテリが空になった。普段は書斎で作業していて、必要に応じてリビングに移動、という書斎からリビングに持ち出す、というような使い方であれば十分なバッテリ駆動時間だ。 ■ 10万円を切る価格と必要十分なスペックとのバランスが魅力 VAIOとして初となるホームユースのノートPCとなったVAIO FL15。10万円を切る価格に抑えつつ、実際の利用シーンでは十分なスペックというバランスは実に絶妙だと感じた。 有線LANやディスクドライブは省略しつつ、ストレージは大容量ファイルの保存にも十分な容量を確保。USB Type-CもUSB PDとDisplayPortに対応しているため、作業場から移動する時はUSB Type-Cで給電するといった使い分けにも便利だ。 VAIOシリーズのラインナップはハイスペックを追求するZシリーズ、レガシーとなりつつあるインターフェイスもカバーすることで「なくて困る」事態をなくすSXシリーズと、どちらも違う形でスペックを追求したラインナップになっている。 一方のVAIO FL15は単なるスペックだけで見るとZシリーズやSXシリーズのようなスペック追求モデルとは異なるように思えるが、「家庭で使うPC」という選択肢としては必要十分な仕様を抑えており、コストというパフォーマンスにおいては従来モデルにも匹敵する高さと感じた。 カスタマイズはできないが本体カラーがブラック、ホワイト、シルバーと3色展開なのも魅力。筆者は時折PC購入の相談を受けることがあるのだが、本体色はホワイトにこだわる女性も少なくない。スペックはカスタマイズできない1種類に割り切りつつ、本体カラーはインテリアとの調和も踏まえたカラー展開という配慮が行き届いている。 これまでビジネスに特化していたVAIOが家庭向けに踏み出したことで、家庭用の新たなラインナップも今後登場するかもしれない。ソニー時代はポケットサイズの「VAIO P」や超薄型の「VAIO X」、ディスプレイがスライドする「VAIO Duo 13」など、尖ったPCを数多く生み出してきたブランドでもあるだけに、今後家庭向けにさらなるラインナップの展開を期待したい。
PC Watch,甲斐 祐樹
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