28日、KDDIは、決済サービス「au PAY」のブランド刷新や今後の機能追加、新たなキャンペーンを発表した。
競合であるソフトバンク系列の「PayPay」やNTTドコモの「d払い」が矢継ぎ早に還元キャンペーンを打ち出す中、auは、7週間にわたり、毎週、総額10億円、7週で1人あたり最大7万ポイント(還元率20%)還元するという大型キャンペーンを実施することになった。
プレゼンテーションを担当したKDDI取締役執行役員専務 パーソナル事業本部長の東海林崇氏は、繰り返し、au以外のユーザーでも使えることをアピール。大型キャンペーンを契機に「au PAY」を利用して欲しいと語る。
使ってもらえれば愛着に繋がる
2019年春のサービス開始時には、auユーザーの解約率低下の効果がメリットのひとつとされていた「au PAY」。その一方で、KDDIでは、これまでにau ID、au PAY、あるいはコンテンツサービスのauスマートパスプレミアムなどをオープン化。auユーザーだけではなく、他キャリアの回線を使うユーザーでも自由に使える環境を整えた。
東海林氏は、スマホ決済を実際に使ってもらえれば、NPS(ネットプロモータースコア、企業・ブランドへの愛着や信頼を示す指標)が高まり、ユーザーとのエンゲージメントが高まると解説。決済体験を契機に、ポイント還元やポイントの利用を味わうことで、継続的な利用に繋がることを示す。
auブランドへの統合、Pontaポイントへの統合でさらなる飛躍
今回の発表にあわせて、au WALLETという名称で提供されてきたアプリやカードの名称変更が発表された。
さらに今後は、ローソンとの提携、Pontaとの連携(ポイント名称がPontaポイントへ統合)も5月以降に控え、その会員基盤は1億を超える。
今回発表された決済サービスの「au PAY」ブランドへの統合、としてオープンなポイントサービスとして広く知られる「Ponta」との連携は、auが2019年春から進める「スマートマネー構想」の一環だ。
2019年の発表当初は、利用促進の形のひとつとして、月々の携帯電話利用料とともに発生するポイントをもとにauユーザーに向けて「au PAY」の利用をうながした格好だったが、2019年中にはauの各種サービスのオープン化を導入されており、他キャリアユーザーへ浸透すべく、準備が進められてきた。
au PAYアプリの機能拡充は、これまでの同社のライフデザイン戦略で手がけてきた銀行、保険などとの連携。「なぜ金融サービスなのか」という問いに、auフィナンシャルホールディングス代表取締役社長の勝木朋彦氏は端的に「決済・金融はリアルでの日常的な消費活動。利用者数がもともと多く、頻度も多い」と説明する。
会見後、東海林氏にあらためてたずねたところ「たとえば通信サービスでは、auショップへ来店、携帯電話を購入していただくと、その後2年以上、接点がないこともあり得る」と解説。金融サービスは通信と並び、ユーザーの生活に欠かせない存在であり、先述したNPSの効果もあって、auとユーザーの関係構築に強い力を発揮するとの期待があるようだ。
同じように、競合の「PayPay」も今後、金融サービスを取り込む方針を示している。また携帯電話事業へ参入する楽天も、コマースのほか、クレジットカード、銀行、ポイントなどを手がけている。スマホ決済サービスは、単体での収益化だけではなく、他の消費動向と組み合わせたデータ分析、あるいは通信事業との組み合わせによる経済圏への取り込みなど、ユーザーを引きつける大きな枠組みのひとつという位置づけだ。
他社ユーザーの取り込みは「本気」
「au以外のユーザーへの取り込みはどこまで本気なのか」という問いに、KDDIライフデザイン事業本部新規ビジネス推進本部の中井武志副本部長は、「かねてよりauの各種サービスをオープン化してきた。このタイミングでブランド整理を含め、au以外の方でも使えることをもう一段、持ち上げて伝えようというのが今回の取り組み。本気です」とコメント。
スーパーアプリ化を目指すという目標ながら、今回は「まずは金融サービスを取りそろえた。今後、いろんなサービスを統合したい。簡便な手続きを提供して、スーパーアプリとしての戦略、流れを考えている」と東海林氏は説明する。
au PAYマーケットに名称変更される通販サービス「au Wowma!」では、現在、au WALLETポイントをau Wowma!専用ポイントへ変換する際、実は1.5倍になるというキャンペーンが3月末まで実施されている。中井氏は「お客さまの消費を押してきた。前年比では130~150%の成長を遂げている。au PAYによってリアルで使って得た還元を、オンラインの消費にも繋げたい」とした。
最終的にau回線の獲得を目指すのか? という問いに、基本的に便利なサービスがauから受けられて、日常に溶け込むのが目指す姿と中井氏は語る。
au PAY、理想の姿は
au PAYにおける金融サービスとの連携について、具体的な利用の流れは今回、発表されていない。auフィナンシャルホールディングス代表取締役社長の勝木朋彦氏は「いっぱいやることがある。eKYCなど。ひとつひとつ着実に進める」とコメント。勝木氏は、KDDIからじぶん銀行の立ち上げに参画し、ライフデザイン事業本部金融・コマース本部長を経て現職に就いた人物で、KDDI社内で長く、金融と通信の融合に携わってきた。
その勝木氏に、au PAYが目指す理想の姿は? と問いかけると「アリペイのような感じ。すぐに投資もできる。少しずつそこへ向かっていくのではないか」とコメント。
続けて同氏は「ただそれは僕(auフィナンシャルグループ)がやること。KDDI側では、モバイルオーダーや、タクシー配車など決済に紐付く、日常で便利なサービスを載せていくということだと思います。
お客さまによっては、コード決済ではなく、非接触などをお使いだと思う。今はコード決済に注力するが、ゆくゆくは全てのインターフェイスに対応し、そこからプリペイドのデポジットや、クレジット、あるいはauのキャリア請求に繋いでいく。
インターフェイスの数だけかけ算になる。自由に組み合わせてご利用いただける環境が、我々の目指す金融としてのスーパーアプリ。なるべく早く実現したい」と語っていた。
auブランドへの統合はチャレンジ
オープン化をアピールしつつ、サービス名に「au」を冠する方向となっているが、勝木氏は「結構チャレンジだとは思うが、そこを乗り切らないといけない」とコメント。
勝木氏は、じぶん銀行も改称してauの冠をいただくことや、競合のひとつであるソニー銀行を例に挙げて「(ソニー銀行のユーザーは)ソニーさんの製品のユーザーだけというわけではない」と述べ、「auブランドもオープンなブランドへ昇華していかなければいけない。そのためには、サービスの1つ、2つを変えてもダメ。全面的にauブランドでオープン性を打ち出していく。なんとか突き抜けていきたい」と意気込みを見せた。
2020-01-28 07:06:22Z
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